2 広義積分

(2) の $I_{n,m}$ は、2 つの意味で広義積分となっていて、 ひとつは $x\rightarrow +0$ に関してであり、 もうひとつは $x\rightarrow\infty$ に関してである。

$n,m$ が整数の場合、$\sin^nx/x^m$ $x\rightarrow +0$ のオーダーは $O(x^{n-m})$ であるから、$x=0$ の近くで リーマン広義積分の意味で積分できるためには、$n\geq m$ が必要かつ十分である。

一方、 $x\rightarrow\infty$ の方は、$m\geq 2$ であれば

$\displaystyle \int_1^\infty\frac{dx}{x^2} = 1
$

よりリーマン広義積分の意味で積分可能となるが、 $m=1$ のときは少し面倒である。

$m=1$ の場合、$n=1$ のときは前に述べたようにリーマン広義積分が存在して、 $I_{1,1}=\pi/2$ となることが知られているが、 その証明は易しくはない。例えば、 [7] IV 章 11 の章末問題にあるリーマン・ルベーグの定理を 使う方法、 [7] IV 章 14 の例 3 の 2 変数関数の微分と積分の順序交換を 利用する方法、 [8] IX 章 2 の例 5 の複素積分の留数の定理を 利用する方法などがある。

さらに、$m=1$$n$ が奇数の場合も $I_{n,1}$ のリーマン広義積分は 有限値となるが、$m=1$$n$ が偶数の場合は リーマン広義積分は無限大に発散する。 ここでは、

  $\displaystyle
I_{2n,1}=\infty$ (3)
を先に示しておく。

整数 $k$ に対して、 $\pi/4+k\pi \leq x\leq 3\pi/4 + k\pi$ では $\vert\sin x\vert\geq 1/\sqrt{2}$ なので、

\begin{eqnarray*}I_{2n,1}
& \geq &
\sum_{k=0}^\infty\int_{\pi/4+k\pi}^{3\pi/4+...
...
\frac{1}{2^{n+1}}\int_{\pi/4}^{\infty}\frac{dx}{x}
\ =\ \infty\end{eqnarray*}

となる。なお、(3) は他にも部分積分で示すこともできる。

結局、広義積分 $I_{n,m}$ が有限値となるのは、

であることになるが、後者が有限であることは、 後で実際に計算で示す。

竹野茂治@新潟工科大学
2020-12-17