3 面積の射影

次は、$S_1$ の面積を、元の円柱の状態で考える。

この $S_1$$y$ 軸の負の方向から見れば、 前に述べたように半円になっている (図 3) が、 その半円の面積と $S_1$ の面積 (図 2) は当然異なる。

それは、$x=0$ 付近は $S_1$ を正面から見ているから、 その辺りの面積は半円と $S_1$ ではほぼ変わらないが、 $x=0$ から離れると $S_1$ の斜めの面を $xz$ 平面に投影して 見ていることになるため、面積はだいぶ小さくなるからである。 その元の $S_1$ の面と投影面でどれくらい面積が違うかを考えてみる。

今、 $\Delta x (> 0)$ を非常に小さい値として、 $xz$ 平面の投影面上での $p\leq x\leq p+\Delta x$$\Delta x$ 幅の 円の一部分 $\Delta S_2$ と、それに対する投影前の 円柱側面 $S_1$ での面積 $\Delta S_1$ を考える (図 5)。

図 5: $xz$ 投影面での $\Delta S_2$
\includegraphics[height=0.2\textheight]{sinar-dS2.eps}

投影面での $x=p$ の円周上の点を Q($p,q$) ($z=q$) とし、 その中心角を $\phi$ とすれば、

\begin{displaymath}
p = \cos\phi,\hspace{1zw}q = \sin\phi
\end{displaymath}

であり、よってこの投影面での面積 $\Delta S_2$
\begin{displaymath}
\Delta S_2\doteqdot q\Delta x = (\sin\phi)\Delta x
\end{displaymath}

となる。 一方、円柱を真上から見ると、その Q に対応する $C$ 上の点 P の座標は、 P($p,q,q$) となり、P の真上から見た $xy$ 平面での中心角も $\phi$ に 等しいことがわかる (図 6)。
図 6: 真上から見た $\Delta x$$\Delta x'$
\includegraphics[height=0.2\textheight]{sinar-dxdx.eps}

この場合、$\Delta S_1$ の面は、ほぼ中心角 $\phi$ の半径に垂直であり、 よって、その横幅 $\Delta x'$$\Delta x$ の比は、ほぼ $\sin\phi$ と なる (図 6 の右の図)。

\begin{displaymath}
\Delta x':\Delta x \doteqdot 1:\sin \theta
\end{displaymath}

よって、$S_1$ 上での面積 $\Delta S_1$ は、
\begin{displaymath}
\Delta S_1\doteqdot q\Delta x' \doteqdot q \frac{\Delta x}{\sin\phi}
= \sin\phi \frac{\Delta x}{\sin\phi}
= \Delta x
\end{displaymath}

となり、すなわち $\Delta S_1$ は底辺 $\Delta x$、高さ 1 の長方形の 面積にほぼ等しくなる。
図 7: $\Delta S_1$ を投影面に作る
\includegraphics[height=0.2\textheight]{sinar-dS1dS2.eps}

よって $S_1$ の面積と同じ面積を $xz$ への投影面に作ると、 どの $x$ でも高さが 1 の長方形になるので (図 7)、 全体として $S_1$ の面積 $A$ は底辺が 2、高さ 1 の長方形の面積に等しく、 よって $A=2$ となることがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年12月13日