6 非同次の線形漸化式
最後に、非同次の定数係数線形漸化式
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(29) |
( は既知の数列、 が未知の数列) についても簡単に述べておこう。
次の事実は、命題 1 と同様に容易にわかる (証明は略す)。
命題 4
非同次の漸化式 (29) の一般解は、
(29) の一つの解と、
同次の漸化式 (3) の一般解の和で表される。
これにより、(29) の一般解を求めるには、
(29) のなんらかの解 (特殊解)
を一つ求めれば良いことになるが、その解法を述べるために、
次のような記法、用語を用いることにする。
まず、非同次の漸化式 (29) に対しても、
(10) を (29) の特性方程式と呼び、
(10) の左辺を (29) の 特性多項式 と呼ぶ。
逆に、最高次数の係数が 1 で、定数項が 0 でない多項式
を特性多項式とする漸化式 (29) の左辺を、
この多項式 に 付随する漸化式 と呼び、
のような記号で書くことにする。
命題 5
- のとき、非同次漸化式
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(30) |
の解の一つは、
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(31) |
で与えられる。
- (29) の特性多項式 が、
最高次数の係数が 1 の 2 つの多項式 , の積に
因数分解されるとき、
数列 をこの に付随する漸化式 とすると、
は を特性多項式に持つ漸化式 を満たす
(すなわち
が成り立つ)。
証明
1.
より、(30) の を として、
その両辺を で割れば
となる。 に対してこれを から まで加えれば、
となるので、 とすれば (31) が得られる。
2.
まず、 が 1 次式のときに示す。
とすると、
より
となる。一方、
となり、確かに (32) が (33) に
付随する漸化式であることがわかる。
よって (32) の右辺は と書けるから
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(34) |
が一次式の について言えたことになる。
が 2 次以上の場合は、(34) を
繰り返し用いればよい。例えば が 2 次の場合、
と因数分解して
とすれば、
(34) より は
となるから、再び (34) を繰り返し使うことで
が得られる。
ここで、命題 5 の 1. の (31) の右辺は、たたみこみ と呼ばれる次の記号
を使うと
と書けることを注意しておく。
この命題 5 により、
非同次の漸化式 (29) の特殊解を求める問題は、
一つ項数の低い漸化式に帰着できることがわかる。
例えば特性多項式 が
の 3 次式の場合を考えてみよう。この場合、非同次の漸化式は
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(35) |
となるが、命題 5 の 2. は、
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(36) |
とすると、(35) の左辺が
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(37) |
となることを意味している。
なおこれは、(37) に (36) を
代入することで (35) の左辺が得られることを
直接確認することもできる。
よって、(35) は では
となるので、命題 5 の 1. により
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(38) |
がその一つの解となる。
よって、(36), (38) により
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(39) |
となり、4 項の非同次漸化式 (35) が
3 項の非同次漸化式 (39) に帰着されることになる。
同じように
を因数分解すれば 2 項の漸化式に帰着され、
最終的に が求まることになる。
されに今の考察から、
例えば
の場合、
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(40) |
の特殊解は、
となることがわかる。
この最後の和は、
のときは等比級数で、
となり、 のときは定数和で、
となる。
よって、(40) の 特殊解は、
, に対しては、
となる。
なお、高校の数学での漸化式の解法では、
特性方程式はむしろ本節のような使い方をするのが主のようで、例えば
の一般項を求めるのに、
特性方程式
の 2 つの解 , を使って、
命題 5 の 2. のような変形を行い、
とし、
とおいて
より を等比数列として求め、
そこから命題 5 の 1. の
ような方法で を求めること行われているようである。
なお、
の場合は、
(41) の と を入れかえた
という変形を行うことで
とおいて を求めることができるから
から を消去して を求める、という方法もある。
竹野茂治@新潟工科大学
2009年8月5日