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3.2 項別微分、項別積分
有限和の場合には、
のように、和の微分は項別に微分したものと等しくなるが、
無限和の場合もそれが成り立つかどうかは明らかではない。
それは、無限和が極限で定義されるだけでなく
微分自体も極限で定義されるため、
そこに極限と極限の順序交換が必要になり、
それが可能であるためにはある種の条件が必要になるからである。
しかし、ベキ級数の項別微分可能性に関しては、次の定理がなりたつ。
定理 12
の収束半径を とすると、
形式的に項別に微分して得られるベキ級数
の収束半径も であり、 で は微分可能 (よって連続) で、
が成り立つ。
証明
一般の場合の証明は面倒なので、簡単のため、
(よって ) の場合に限って証明を行う。
まず、
の収束半径も
であることは、
より O.K. よって、あとは なる に対して、
|
(9) |
となることを言えばよい (これも無限和に対しては明らかではない)。
となるが、ここで次のテイラーの定理を用いる:
「 が で 2 回微分可能で、
がそこで連続ならば、
に対して
となる () が存在する
( は にも依存する)。」
これにより、すべての に対して、
となる () が存在する。よって、
となるので、
となる。ここで、 だから、 となる をとり、
の範囲で
とすると
考えると、
なので、
とでき、和
は、
なので、ダランベールの判定法により有限の値に収束する。よって、
となり、
のときに右辺は確かに 0 に収束するので
(9) が言えたことになる。
この定理 12 により、
ベキ級数は収束半径内で何回でも微分可能であることになる
(こういう関数を 無限回微分可能、 級、
あるいは なめらかな関数 と呼ぶことがある) であることがわかる。
逆に、そうでない関数はベキ級数展開できない。
これはフーリエ級数が不連続な関数でも展開できるのとは大いに異なる点である。
また、「ベキ級数展開できる」という性質は無限回微分可能という性質よりも強い
ことになるが、よってベキ級数展開できる関数のことを 解析的 と呼んで、
無限回微分可能と区別することがある。
この定理 12 により、
ベキ級数は自由に項別微分ができることになるが、
実際にいくつか計算してみる。
のマクローリン展開
を微分すると、
となる。また、
を微分すると、
となるし、 を微分すると
となる。
無限等比級数の公式
|
(10) |
は、収束半径は
なので確かに 1 であり、
これを微分すると、定理 12 により、 で
よって、
が得られる。さらに微分すると、
よって、
となる。
微分の逆を考えれば、次の項別積分の定理が得られる。
系 13
の収束半径が であるとき、
の原始関数 () は、
|
(11) |
で与えられ、この収束半径も となる。
これは、(11) で与えられるベキ級数を とおいて、
これに定理 12 を適用すれば、
であって収束半径が であることがわかり、
なので、 であることが言える。
これを使うと例えば、(10) から、これを積分して
|
(12) |
が得られる (左辺は のとき 0)。
また、 のとき、 なので、 を
(10) の の代わりに を代入すれば
|
(13) |
が得られるが、これを で積分すると、
|
(14) |
が得られる。この のベキ級数展開を
マクローリン展開から計算するとかなり大変な計算になるが、
このように積分を利用すると容易に求められる。
また、(12) の式からは の値を
求めることはできないが ( は収束半径の内側ではないので代入できない)、
(12) の の代わりに を代入して、
(12) から引き算すると、
より、
|
(15) |
が得られる ()。
この式を使えば、 とすれば
より
を与える級数が得られる。
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竹野茂治@新潟工科大学
2006年9月26日