3 N=2 の図形的な証明

本節では、定理 1$N=2$ の場合に限って、 図形的な証明を試みる。 よってこの場合示すべきは、正の実数 $a_1,a_2,b_1,b_2$ に対して
\begin{displaymath}
a_1b_1+a_2b_2\leq\sqrt{a_1^2+a_2^2}\sqrt{b_1^2+b_2^2}\end{displaymath} (5)

が成り立つことと、この等号が成立するのが
\begin{displaymath}
\frac{b_1}{a_1}=\frac{b_2}{a_2}\end{displaymath} (6)

のとき、ということになる。

まず、以下の 2 つの長方形 (図 1) を見比べて見てもらいたい。

図 1: 2 つの長方形
\includegraphics[height=0.25\textheight]{fig1-3.eps}

この 2 つの長方形は、いずれも底辺 $a_1+b_2$, 高さ $b_1+a_2$ で、 4 つの直角三角形の配置を変えただけの同じ長方形なので、

\begin{displaymath}
S_1+S_2=S_3\end{displaymath} (7)

であることがわかる。 この左辺は $S_1+S_2=a_1b_1+a_2b_2$ であるから (5) の左辺に等しく、 また $S_3$ は平行四辺形で、その 2 辺は三平方の定理より
\begin{displaymath}
\sqrt{a_1^2+a_2^2},\hspace{1zw}\sqrt{b_1^2+b_2^2}
\end{displaymath}

であることがわかる。 2 辺が決まった平行四辺形は、高さが最も高いときに面積は最大となるので、 よってその平行四辺形の面積は、その 2 辺が直角となった長方形の面積以下となる。 すなわち
\begin{displaymath}
S_3\leq \sqrt{a_1^2+a_2^2}\sqrt{b_1^2+b_2^2}\end{displaymath} (8)

となる。よって (7), (8) から (5) が成り立つことが示されたことになる。

次に、(5) の等号成立条件であるが、 これは (8) の等号が成り立つとき、 すなわち $S_3$ が長方形となるときを意味する (図 2)。

図 2: $S_3$ が長方形の場合
\includegraphics[height=0.25\textheight]{fig2.eps}

この場合は、図からわかるように、 $a_1$, $a_2$ が直角を挟む直角三角形と $b_1$, $b_2$ が直角を挟む直角三角形とが相似になるので、 よって (6) が成り立つことになる。 しかも、斜辺の比も考えれば、

\begin{displaymath}
\frac{b_1}{a_1}=\frac{b_2}{a_2}
= \frac{\sqrt{b_1^2+b_2^2}}{\sqrt{a_1^2+a_2^2}}\end{displaymath} (9)

となることもわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年1月20日