4 運動方程式

運動方程式は、各剛体毎にその重心を中心とする方程式を考えればよく、 そのために各剛体にかかる力を考える。

剛体 $A_j$ の重心 $\mbox{\boldmath$r$}_j$ には、 $A_j$ の質量に対する重力 $-m_jg\mbox{\boldmath$e$}_y$ ( $\mbox{\boldmath$e$}_y=(0,1)$, $g$ は重力加速度) がかかり、 つなぎ目 $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_{j-1}$, $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_j$ の場所では、 $A_{j-1}$, $A_{j+1}$ からの力がかかる。 $A_{j+1}$ $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_j$ の場所で $A_j$ に及ぼす力 を $\mbox{\boldmath$T$}_j$ とすると、その反作用により、 $A_j$ $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_j$ の場所で $A_{j+1}$ $-\mbox{\boldmath$T$}_j$ の 力を及ぼすことになる。

よって、$A_j$ の運動方程式は、

\begin{displaymath}
m_j\ddot{\mbox{\boldmath$r$}}_j = \mbox{\boldmath$T$}_j-\mb...
...$}_{j-1}-m_jg\mbox{\boldmath$e$}_y
\hspace{1zw}(1\leq j\leq n)\end{displaymath} (3)

となる。ここで、「$\dot{}$」は時刻 $t$ での微分を意味するものとする。 なお、 $-\mbox{\boldmath$T$}_0$$A_1$ を固定した始点からの反作用であり、 また $\mbox{\boldmath$T$}_n=0$ であることに注意する。

次は $\mbox{\boldmath$r$}_j$ を中心とする回転運動の方程式を考える。

$A_j$ は単位ベクトル $\mbox{\boldmath$q$}(\theta_j)$ に垂直で、 $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_j$ では $\mbox{\boldmath$q$}(\theta_j)$ 方向の力によって $\theta$ が増える回転をする (3)。

図 3: $A_j$ に対する回転力のモーメント
\includegraphics[width=12cm]{pdl1-mom.eps}
よって、 $\mbox{\boldmath$T$}_{j}$ $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_j$ で、 $\mbox{\boldmath$r$}_j$ を中心に $A_j$$\theta _j$ の増える方向に 回そうとするモーメントは、

\begin{displaymath}
\frac{l_j}{2}\mbox{\boldmath$T$}_{j}\mathop{・}\mbox{\boldmath$q$}(\theta_j)
\end{displaymath}

の内積によって与えられる。同様に $-\mbox{\boldmath$T$}_{j-1}$ $\mbox{\boldmath$\hat{r}$}_{j-1}$ で、 $\mbox{\boldmath$r$}_j$ を中心に $A_j$ を回そうとするモーメントは、

\begin{displaymath}
\frac{l_j}{2}(-\mbox{\boldmath$T$}_{j-1})\mathop{・}(-\mbox{...
...x{\boldmath$T$}_{j-1})\mathop{・}\mbox{\boldmath$q$}(\theta_j)
\end{displaymath}

となる。よって、$A_j$ の重心での慣性モーメントを $I_j$ とすると、 $A_j$ $\mbox{\boldmath$r$}_j$ 中心での回転の方程式は次のようになる。
\begin{displaymath}
I_j\ddot{\theta}_j
= \frac{l_j}{2}(\mbox{\boldmath$T$}_j+...
...p{・}\mbox{\boldmath$q$}(\theta_j)
\hspace{1zw}(1\leq j\leq n)\end{displaymath} (4)

慣性モーメント $I_j$ は、長さ $l_j$ と線密度 $\rho$ により

\begin{displaymath}
I_j
=\rho\int_{-l_j/2}^{l_j/2}x^2 dx
=\frac{2\rho}{3}\lef...
...j}{2}\right)^3
=\frac{\rho l_j^3}{12}
=\frac{m_j l_j^2}{12} \end{displaymath} (5)

となるので、(4) は
\begin{displaymath}
\frac{m_j l_j}{12}\ddot{\theta}_j
= \frac{1}{2}(\mbox{\bo...
...p{・}\mbox{\boldmath$q$}(\theta_j)
\hspace{1zw}(1\leq j\leq n)\end{displaymath} (6)

となる。

(3) の運動方程式は、2 次元ベクトルなので、 成分で考えれば $2n$ 本あり、(6) は $n$ 本あるので 合計 $3n$ 本、 未知関数は $\mbox{\boldmath$T$}_0\sim\mbox{\boldmath$T$}_{n-1}$ を成分で考えれば $2n$ 個、 $\theta_1\sim\theta_n$$n$ 個なので、 (3) と (6) から $\mbox{\boldmath$T$}_0\sim\mbox{\boldmath$T$}_{n-1}$ を消去すれば、 $\theta_1\sim\theta_n$ に対する丁度 $n$ 本の方程式が得られることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2018-11-12