3 ホーン方程式

ホーン方程式の導出は、Wikipedia [3] にも概略は載っているし、 ランダウ-リフシッツ [8] にも載っているが、 本稿では、[9] のノズル方程式からの導出を行う。

楽器のように断面が一様でない管中の気体の 1 次元的な方程式 (連立偏微分方程式) は以下の通り ([9])。

  $\displaystyle
\left\{\begin{array}{l}
A(x)\rho_t + (A(x)\rho u)x = 0\\
A(x)(\rho u)_t + (A(x)\rho u^2)_x + A(x)P_x = 0
\end{array}\right.$ (1)
ここで、$t$ は時刻、$x$$x$ 軸に沿った座標、 $\rho=\rho(x,t)$ (未知関数) は気体密度、 $u=u(x,t)$ (未知関数) は気体速度、 $P=P(x,t)$ (未知関数) は単位面積当たりの気体圧力、 $A(x)$ (既知関数) は $x$ 軸に垂直な面での $x$ での断面積とする。 ただし、気体の粘性は無視しているし、 $A(x)$ が大きくなりすぎると気体を 1 次元的な運動と見ることが できなくなるので、方程式の解と実際の現象とのずれが大きくなるだろう。

$P$$\rho$ のみの関数と考え、$P=P(\rho)$ とすると、 音速 $c$ は、

  $\displaystyle
c^2=\frac{dP}{d\rho}$ (2)
となる。本稿では、この $c$ は一定であると考え、 また楽器管内の流速は $c$ に比べだいぶ小さいと考え (多分音速の数パーセント程度)、(1) の $u^2$ の項は無視する。 こうすると (1) より、
$\displaystyle (A(x)\rho u)_x = -A(x)\rho_t,
\hspace{1zw}(A(x)\rho u)_t = -A(x)P_x
$
となるので、ここから $u$ を消去すれば
$\displaystyle (A(x)P_x)_x = A(x)\rho_{tt}
$
となるが、(2) より、
$\displaystyle P_t = \frac{dP}{d\rho} \rho_t = c^2\rho_t
$
なので $P_{tt} = c^2\rho_{tt}$ となり、 よって、圧力 $P=P(x,t)$ のみを未知関数とする方程式
  $\displaystyle
\frac{1}{c^2}P_{tt} = \frac{1}{A(x)}(A(x)P_x)_x$ (3)
が得られる。 これがウェブスターのホーン方程式である。 本稿ではこの方程式を使って考察を行う。

なお、ホーン方程式 (3) は圧力 $P$ を未知関数としているが、 高校の物理では、縦波は圧力ではなく「変位」を未知関数として 説明することが多い。 変位と圧力では、定在波の「腹」と「節」の関係が逆になるので 注意が必要である。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-01-11