3 積分の変換

$x=1$ での反転 $x=1/y$ によって、$f_0(x)$
  $\displaystyle
f_0\left(\frac{1}{y}\right)
= y\log\left\vert\frac{1+1/y}{1-1/y}\right\vert
= y\log\left\vert\frac{y+1}{y-1}\right\vert
= y^2f_0(y)$ (3)
となるので、この置換により積分 $I_1=\int_0^1f_0(x)dx$ は、
$\displaystyle I_1
= \int_0^1f_0(x)dx
= \int_1^\infty f_0\left(\frac{1}{y}\right)\frac{1}{y^2}\,dy
= \int_1^\infty f_0(y)dy
$
が成立する。 よって、
$\displaystyle I_0
= \int_0^\infty f_0(x)dx
= \int_0^1 f_0(x)dx + \int_1^\infty f_0(x)dx
= 2I_1
$
となり、$(0,1)$ 乗の積分値 $I_1$ のみを考えればよいことになる。

$I_1$ の値も容易には求まらないが、部分積分すると、

$\displaystyle I_1$ $\textstyle =$ $\displaystyle \int_0^1 (\log x)'\log\frac{1+x}{1-x}\,dx$ 
  $\textstyle =$ $\displaystyle \left[\log x\log\frac{1+x}{1-x}\right]_0^1
-\int_0^1 (\log x)\left(\frac{1}{1+x}+\frac{1}{1-x}\right)dx$(4)
となる。

$x\rightarrow 1-0$ では、

$\displaystyle \log x = O(x-1),\hspace{1zw}\log\frac{1+x}{1-x} = \log2-\log(1-x)+o(1)
$
$x\rightarrow +0$ では、
$\displaystyle \log\frac{1+x}{1-x}
= \log\left(1+\frac{2x}{1-x}\right) = O(x)
$
なので、いずれの極限でも
  $\displaystyle
\log x\log\frac{1+x}{1-x} \rightarrow 0$ (5)
が成り立つことがわかる。よって、$f_1(x)$
  $\displaystyle
f_1(x)
= -\,\frac{2}{1-x^2}\log\vert x\vert
= \frac{2}{x^2-1}\log\vert x\vert$ (6)
とすると、 (4),(5) より
  $\displaystyle
I_1 = \int_0^1f_1(x)dx$ (7)
となる。 この $f_1(x)$ は、偶関数で、$x>0$ では正であり、
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow 1}{f_1(x)}
=\lim_{x\rightarrow 1}\frac{2\log x}{x^2-1}
=\lim_{x\rightarrow 1}\frac{2}{x\cdot 2x}
=1
$
より $x=1$ では $f_1(1)=1$ とすれば連続となり、 $f_1(+0)=\infty$$f_1(\infty)=0$ となるが、 $x=0$ 付近、$x=\infty$ 付近でも可積分となることは容易にわかる。

さらに、$x=1/y$ の反転で、

$\displaystyle f_1\left(\frac{1}{y}\right)
= -\,\frac{2}{1-1/y^2}\log\left\vert\frac{1}{y}\right\vert
= \frac{2y^2}{y^2-1}\log\vert y\vert
= y^2f_1(y)
$
となり、$f_0$ の (3) と同じ性質を持つので、 $f_1$ に対しても
$\displaystyle I_1 = \int_0^1f_1(x)dx = \int_1^\infty f_1(y)dy,\hspace{1zw}I_0 = 2I_1 = \int_0^\infty f_1(x)dx
$
が成立する。

さらにもう一つ別な置換も紹介する。 $(0,1)$ での $f_0(x)$ の積分で $(1+x)/(1-x)=t$ と置換すると $x=(t-1)/(t+1)$, $dx=2dt/(1+t)^2$ となり、 $x=+0,1-0$$t=1+0,\infty$ に対応し、

  $\displaystyle
f_0(x)
= \frac{1}{x}\log\frac{1+x}{1-x}
= \frac{t+1}{t-1}\log t
= \frac{(t+1)^2}{2} f_1(t)$ (8)
となるので、
  $\displaystyle
I_1
= \int_0^1f_0(x)dx
= \int_1^\infty\frac{(t+1)^2}{2} f_1(t)\frac{2dt}{(1+t)^2}
= \int_1^\infty f_1(t)dt$ (9)
となる。 つまり、この置換でも部分積分と同じ結果 (7) が得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-11-14