2 被積分関数の性質

本稿では、(1) の被積分関数を $f_0(x)$ とする。
  $\displaystyle
f_0(x) = \frac{1}{x}\log\left\vert\frac{x+1}{x-1}\right\vert$ (2)
これは、$x=-1,0,1$ 以外で定義される関数だが、ロピタルの定理により
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow 0}{f_0(x)}
=\lim_{x\rightarrow 0}\frac{\log(1...
...1-x)}{x}
=\lim_{x\rightarrow 0}{\left(\frac{1}{1+x}+\frac{1}{1-x}\right)}
=2
$
となるので、$f_0(0)=2$ と定義すれば、$x=0$ でも連続になる。 また、
$\displaystyle f_0(-x)
= -\frac{1}{x}\log\left\vert\frac{-x+1}{-x-1}\right\vert
= \frac{1}{x}\log\left\vert\frac{x+1}{x-1}\right\vert
= f_0(x)
$
より $f_0(x)$ は偶関数なので、 主な性質に関しては $x>0$ のみを考えればよい。

$0<x<1$ では

$\displaystyle \frac{x+1}{1-x} = -1 + \frac{2}{1-x} > 1
$
$x>1$ では
$\displaystyle \frac{x+1}{x-1} = 1 + \frac{2}{x-1} > 1
$
なので、 $x>0$ では $f_0(x)>0$ となる。

また、 $x\rightarrow 1$ では、

$\displaystyle f_0(x)
= \frac{1}{x}\log\left\vert\frac{x+1}{x-1}\right\vert
\rightarrow \infty
$
となり、 $x\rightarrow\infty$ では、
$\displaystyle f_0(x)
= \frac{1}{x}\log\frac{x+1}{x-1}
= \frac{1}{x}\log\frac{1+1/x}{1-1/x}
\rightarrow 0\times \log 1 = 0
$
となる。 つまり、(1) の $I_0$ は、 $x=1$$x=\infty$ の 2 箇所に関して広義積分になっていることがわかる。

ただしそのオーダーを考えると、 $x\rightarrow 1$ に関しては、

$\displaystyle f_0(x)
= \frac{1}{x}\left(\log(x+1)-\log\vert x-1\vert\right)
=\log 2 + o(1) - (1+o(1))\log\vert x-1\vert
$
なので、$x=1$ の付近では可積分、 $x\rightarrow\infty$ に関しては、
$\displaystyle f_0(x)
= \frac{1}{x}\log\frac{x+1}{x-1}
= \frac{1}{x}\log\left(1+\frac{2}{x-1}\right)
= \frac{1}{x}\,\frac{2}{x-1}(1+o(1))
$
なので、$x=\infty$ 付近でも可積分となり、 よって (1) は有限な値に収束することがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-11-14