3 各状態の比率の継承

次に、各状態の分布 (比率) が、どのように次の世代に継承されるか、 ということを考えてみる。

簡単のため、男女は同数であるとし、 各夫婦は $X$, $\bar{X}$ の状態にかかわらず 同程度の子を作ると考えることにする。

男性の $\bar{X}Y$ の割合を $A$ とし、 よって $XY$ の割合を $1-A$ とする。 同様に、女性の $\bar{X}\bar{X}$ の割合を $B$, $\bar{X}X$ の割合を $C$ とし、 よって、$XX$ の割合を $1-B-C$ とする。

このとき、次の子の世代のそれぞれの割合を求めることにする。 子の世代の割合を、ここでは $A'$, $B'$, $C'$ のように書くことにする。

  1. $\bar{X}Y$ $\bar{X}\bar{X}$ の子の場合

    まず、このような親の組み合わせの割合は、 男女それぞれの比率が $A$,$B$ なので、 すべての夫婦に対して $AB$ の割合で起こることに注意する。

    そして、この場合は、子には

    \begin{displaymath}
\bar{X}\bar{X},\hspace{1zw}
\bar{X}\bar{X},\hspace{1zw}
Y\bar{X}\hspace{1zw},
Y\bar{X}
\end{displaymath}

    の 4 通り、つまり実質 2 通りが現れる。 つまり、子の世代での男性のうち、$Y\bar{X}$ の割合 $A'$ には、 この親の組合せの割合である $AB$ が、 女子のうち $\bar{X}\bar{X}$ の割合 $B'$ にも $AB$ が含まれることになる。

    なお、$Y\bar{X}$ になるか $\bar{X}\bar{X}$ になるかは 1/2 であるから、 $AB$ ではなく $AB/2$ ではないかと思うかもしれないが、 $A'$ は、「男性のうちの」$Y\bar{X}$ の割合であるから、 1/2 をつける必要はない。

  2. $\bar{X}Y$$\bar{X}X$ の子の場合 (夫婦の割合は $AC$)

    この場合は、子供は

    \begin{displaymath}
\bar{X}\bar{X},\hspace{1zw}
\bar{X}X,\hspace{1zw}
Y\bar{X},\hspace{1zw}
YX
\end{displaymath}

    の 4 種類が同程度に起こりうる。 この夫婦の割合は $AC$ なので、 $B'$$AC/2$, $C'$$AC/2$, $A'$$AC/2$, $1-A'$$AC/2$ が 含まれることになる。

  3. $\bar{X}Y$$XX$ の子の場合 (夫婦の割合は $A(1-B-C)$)

    この場合は、

    \begin{displaymath}
\bar{X}X,\hspace{1zw}
\bar{X}X,\hspace{1zw}
YX,\hspace{1zw}
YX
\end{displaymath}

    の実質 2 種類なので、 $C'$$1-A'$$A(1-B-C)$ が含まれる。

  4. $XY$ $\bar{X}\bar{X}$ の子の場合 (夫婦の割合は $(1-A)B$)

    この場合は、

    \begin{displaymath}
X\bar{X},\hspace{1zw}
X\bar{X},\hspace{1zw}
Y\bar{X},\hspace{1zw}
Y\bar{X}
\end{displaymath}

    の実質 2 種類なので、 $C'$$A'$$(1-A)B$ が含まれる。

  5. $XY$$\bar{X}X$ の子の場合 (夫婦の割合は $(1-A)C$)

    この場合は、

    \begin{displaymath}
X\bar{X},\hspace{1zw}
XX,\hspace{1zw}
Y\bar{X},\hspace{1zw}
YX
\end{displaymath}

    の 4 種類なので、 $C'$, $1-B'-C'$, $A'$, $1-A'$$(1-A)C/2$ が含まれる。

  6. $XY$$XX$ の子の場合 (夫婦の割合は $(1-A)(1-B-C)$)

    この場合は、

    \begin{displaymath}
XX,\hspace{1zw}
XX,\hspace{1zw}
YX,\hspace{1zw}
YX
\end{displaymath}

    の 2 種類なので、 $1-B'-C'$, $1-A'$$(1-A)(1-B-C)$ が含まれる。

結局以上により、

\begin{eqnarray*}A'
&=& AB+\frac{1}{2}AC+(1-A)B+\frac{1}{2}(1-A)C,
\\
1-A'
...
...rac{1}{2}(1-A)C
\\
1-B'-C'
&=& \frac{1}{2}(1-A)C+(1-A)(1-B-C)\end{eqnarray*}


が得られることになる。それぞれ展開すると、
$\displaystyle A'$ $\textstyle =$ $\displaystyle B+\frac{1}{2}C$ (1)
$\displaystyle 1-A'$ $\textstyle =$ $\displaystyle 1-B-\frac{1}{2}C$ (2)
$\displaystyle B'$ $\textstyle =$ $\displaystyle AB+\frac{1}{2}AC$ (3)
$\displaystyle C'$ $\textstyle =$ $\displaystyle A+B+\frac{1}{2}C-2AB-AC$ (4)
$\displaystyle 1-B'-C'$ $\textstyle =$ $\displaystyle 1-A-B-\frac{1}{2}C+AB+\frac{1}{2}AC$ (5)

となる。 (1), (2) の右辺の和、 (3), (4), (5) の右辺の和が それぞれ 1 となることは容易に確認できるだろう。

この (1)-(5) を用いれば、 親から次の世代への割合の継承が計算できることになる。

例えば、$A=0.4$, $B=0.6$, $C=0.2$ の場合、

\begin{eqnarray*}A' &=& 0.6+0.1=0.7,\\
B' &=& 0.24+0.04 = 0.28,\\
C' &=& 0.4+0.6+0.1-0.48-0.08=0.54\end{eqnarray*}


のようになる。同様に、孫の世代まで計算すれば、表 1 のようになる。

表 1: $A=0.4$, $B=0.6$, $C=0.2$ の場合
  男性 女性
  $A$ ($Y\bar{X}$) $1-A$ ($YX$) $B$ ( $\bar{X}\bar{X}$) $C$ ($\bar{X}X$) $1-B-C$ ($XX$)
0.4 0.6 0.6 0.2 0.2
0.7 0.3 0.28 0.54 0.18
0.55 0.45 0.385 0.48 0.135


竹野茂治@新潟工科大学
2007年9月4日