3 重心の分割と統合

重心の計算では、物体を次のように分割して考えることができる。


命題 1

質量 $M$ の物体 $A$ を、 質量 $M_j$ の物体 $A_j$ ( $j=1,2,\ldots,n$) に分けて考え、 各 $A_j$ の重心を $\mathrm{G}_{j}$ とすれば、 $A$ の重心 G は、 $\mathrm{G}_{j}$ にそれぞれの質量 $M_j$ が集中していると考えた質点系の重心の公式

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}}=\frac{1}{M}\sum_{j=1}^n M_j\overrightarrow{\mathrm{O\mbox{$\mathrm{G}_{j}$}}}
\end{displaymath} (13)

により求めることができる。


証明

これも、点、線、面、立体のいずれでも同様であるから、立体について示す。 $V$$V_j$ ( $j=1,2,\ldots,n$) に分割する。 このとき、(11) より、各 $V_j$ の重心 $\mathrm{G}_{j}$

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{O\mbox{$\mathrm{G}_{j}$}}} = \frac{...
...}\int_{V_j}\rho(\mathrm{P})\,\overrightarrow{\mathrm{OP}}\,dv
\end{displaymath} (14)

と表される。一方 (11) より、 $\overrightarrow{\mathrm{OG}}$ も同様の体積分で書けることになるが、 それを $V_j$ に分割すると、(14) より
\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}}
= \frac{1}{M}\int_{V}\rho(\ma...
...j=1}^n M_j\overrightarrow{\mathrm{O\mbox{$\mathrm{G}_{j}$}}}
\end{displaymath}

となり、(13) が得られる。


この命題 1 により、 簡単な図形ならば基本的な図形に分割して重心を求めることができる。 例えば対称ではない一様な面密度の四角形 ABCD の重心を求める場合は、 これを $\triangle\mathrm{ABC}$ $\triangle\mathrm{ACD}$ の 2 つに分け、 それぞれの重心 $\mathrm{G}_{1}$, $\mathrm{G}_{2}$ を中線の交点によって求め、 それぞれの面積 $S_1$, $S_2$ を求めれば、 (13) により四角形 ABCD の重心 G は

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}}
=\frac{S_1\overrightarrow{\math...
..._2\overrightarrow{\mathrm{O\mbox{$\mathrm{G}_{2}$}}}}{S_1+S_2}
\end{displaymath}

と求まることがわかる。 なお、この式は、G が線分 $\mathrm{G}_{1}$ $\mathrm{G}_{2}$$S_2:S_1$ に内分する点であることを示している。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年4月23日