2 物理的な重心の定義
重心とは、質量を持った物体 (の集まり) に対して、
その 1 次モーメントがつり合う点を指す。
ここで、点 P に質量 があるとき、
その質点の点 A に対する 1 次モーメント とは、
ベクトル
のことであるとする。
まず、「点」(質点系) に対する重心を考える。
3 次元空間内の 個の点
(
) に質量 があるとき、その重心 G は
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(1) |
が成り立つ点となる。
これら質点の総質量
を とすると、
(1) の左辺は
となるので、重心 G の位置ベクトルは
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(2) |
と表すことができる。
特に、各点の質量 がすべて等しいときは
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(3) |
の形となる。
次に、「線」に対する重心を考える。
例えば針金のように、3 次元空間内の質量を持つ曲線 を考える。
上の点を () で表し、
での針金の線密度、
すなわち単位長さ当たりの質量を
とする。
このとき、 の範囲 を 等分し、
この針金を細かく分割する:
を十分大きくとれば、
各 に対し
から
までの弧の長さ は十分小さく、それぞれの重心は
に近いので、
この針金の重心 G に対しては (1) より
が成り立ち、この式で
とすれば左辺は線積分に、
両辺の誤差は 0 に収束し、
重心 G の満たす条件式
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(4) |
が得られる。
ここで、針金の総質量
を とすれば、
(2) と同様に G の位置ベクトルの表現式
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(5) |
が得られ、
が一定ならば、 を曲線 の長さとして
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(6) |
が得られる。
同様に、「面」としての重心は、
曲面 の点 P での面密度 (単位面積当たりの質量) を
とすれば、重心 G の条件は面積分により、
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(7) |
と表わされ、よって総質量
を とすれば
は
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(8) |
と表され、
が一定ならば、 を曲面 の面積として
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(9) |
が得られる。
また、「立体」としての重心は、
立体 の点 P での体積密度 (単位体積当たりの質量) を
とすれば、重心 G の条件は体積分により
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(10) |
と表わされ、よって総質量
を とすれば
は
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(11) |
と表され、
が一定ならば、 を曲面 の体積として
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(12) |
が得られる。
(1), (4), (7), (10) からわかるが、
いずれの場合も重心では、
任意の重力方向
(
は単位ベクトル) に対して重心への回転モーメント
の和や積分が
となるので、この点で物体を支えればそれは静止する。
また、(2), (5), (8), (11) からわかるが、
任意の点 A に対するこれらの物体による 1 次モーメントは、
いずれも重心に総質量が集中していると考えた場合の 1 次モーメント
に等しくなる。
例えば、質点系の場合は、(2) より
となるからである。線、面、立体の場合も同様である。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年4月23日