3 周期超関数

超関数のフーリエ級数を紹介するために、 まず周期的超関数の空間 $\mathcal{D}'_T$ について説明する。 なお、ここでは簡単のため 1 次元の超関数の話に限定するが、 以降の話は容易に $n$ 次元の話、 すなわち $n$ 変数の周期超関数に拡張することができる。

超関数 $f\in \mathcal{D}' (=\mathcal{D}'(\mathbf{R}))$周期 $T$ を持つ ($T>0$) とは、 任意の $x$ に対して $f(x+T)=f(x)$ となること、すなわち、 任意の $\phi(x)\in\mathcal{D}$ に対して、

\begin{displaymath}
\left\langle  f(x), \phi(x-T) \right\rangle = \left\langle  f(x), \phi(x) \right\rangle \end{displaymath} (3)

が成り立つこと、と定める。 正の周期を持つ超関数を 周期超関数 と呼ぶ。

もちろん、普通の $f\in L^1_{loc}$ で周期 $T$ を持つ関数は、 超関数としても周期 $T$ を持つ。逆に、$L^1_{loc}$ でない代表的な 周期超関数としては、

\begin{displaymath}
\delta_T(x) = \sum_{n=-\infty}^\infty \delta(x+nT)\end{displaymath} (4)

がある。$T(>0)$ を周期とする超関数全体を $\mathcal{D}'_T$ で表す。 次の命題 1 は、 $\mathcal{D}'_T$ として自然に予想される性質である。


命題 1 $\mathcal{D}'_T\subset\mathcal{S}'$


この定理の証明は少し細かいし、 本稿ではそれほど使うわけでもないので、 後で紹介する (9 節)。

竹野茂治@新潟工科大学
2015年6月1日