5 サイクロイド
通常サイクロイド曲線は、半径 1 の車輪で作られるものをさす。
半径 1 の車輪を、 軸の上を右に転がしていくとき、
その車輪上の点の移動する軌跡がサイクロイドである (図 2)。
回転角を とすると、OQ は弧 PQ の長さに等しいので、
Q(, 0) で、よって P(,) の座標は、 を用いて、
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(24) |
と表される。
からもわかるが、 は に関して
で
単調で、 と は 1 対 1 に対応する。
そして
はそれぞれ
に対応する。
と の対応は、
では は 0 から 2 まで単調に増加し、
そこから対称に
では は単調に減少して 0 になる (図 3)。
なお、このグラフは一見楕円に似ているが、
図 3 に見られるように楕円とは多少ずれが
ある1。
この
上で (24) により
定義されるサイクロイド関数を、今後
と書くことにする。
この関数の導関数は、
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(25) |
となるので、 () に特異性を持ち、
,
であることに注意する。
さて、4 節で (22) の積分により、
サイクロイド関数
を , 両方向に等倍に拡大 (縮小) した
関数を上下逆さにしたもの
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(26) |
が、(19) を満たす関数であることを見たが、
自身は
で滑らかな関数になっている。
まず、(26) がそこまで含めて
方程式 (20) を満たすか調べてみる。
は
で表され、よって (25) より
となるので、(20) の左辺に代入すると、
となり、
で (20) を満たす
ことがわかる。
しかし、
では なので、
この
の部分は (21) の
マイナス符号の式に対応する。
すなわち (21) から (22) を
導くところでは、
の近くでは だからプラス符号の式を積分するが、
あるところで となり、
そこから先はマイナス符号の式を積分することで、
左右対称な形で でつながるということになる。
このように のところで抜けおちる (20) の
解は他にもあり、(20) は
という特異解を持つ。
よって、 となる解としては、
上に見た
以外に、
それを のところで切り離し、定数 でそれらを
つないだもの (図 4)
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(27) |
なども解になっていて、よって微分方程式 (20) の
の初期値問題の解の一意性は成り立たない。
なお、サイクロイド関数の 2 階微分は、
なので
となり、
定数をサイクロイドの間に入れた (27) の形の解は、
級だが 級ではないことがわかる。
ただし、方程式 (20) 自体は 1 階の方程式だから、
(27) は 級でなくても
一応正しく (20) を満たしてはいる。
竹野茂治@新潟工科大学
2016年1月8日