4 連続曲線の交点

前節と同様の方法で、2 次元のブラウアーの不動点定理を用いて、 問題 2 を考えることにする。 問題 2 $(x_1(t),y_1(t))$ で表される曲線を $C_1$ $(x_2(s),y_2(s))$ で表される曲線を $C_2$ と書くこととし、 2 変数関数 $X(s,t)$, $Y(s,t)$
\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{lll}
X(s,t) &= X(s,t;\epsilon)
&= s...
...ta (x_2(s)-x_1(t)) + \delta (y_2(s)-y_1(t))
\end{array}\right.\end{displaymath} (6)

と定める ($\epsilon >0$, $\delta>0$, $s,t\in [0,1]$)。 前節と同様に、$\epsilon$, $\delta$ を十分小さく取れば、 すべての $s,t\in [0,1]$ に対して、
\begin{displaymath}
0\leq X(s,t)\leq 1,\hspace{1zw}0\leq Y(s,t)\leq 1\end{displaymath} (7)

となることを示すことが目標となる。 もし、これが言えれば、2 次元のブラウアーの不動点定理を適用することで、
\begin{displaymath}
X(s_0,t_0)=s_0,\hspace{1zw}Y(s_0,t_0)=t_0
\end{displaymath}

となる $s_0,t_0\in [0,1]$ が存在し、 そしてこれは (6) より明らかに
\begin{displaymath}
(x_1(t_0),y_1(t_0)) = (x_2(s_0),y_2(s_0))
\end{displaymath}

を意味するので、$C_1$$C_2$ の交点の存在が示されることになる。

なお、今後は (7) を示すわけであるが、 そのために $C_1$$C_2$ の交点が存在しない、と仮定してよいことに注意する。 つまり、背理法で考え、$C_1$$C_2$ の交点が存在しないと仮定するとき、 (7) が十分小さい $\epsilon$, $\delta$ に対して言えてくれれば、 上の論法でブラウアーの定理により交点の存在が言えてしまうので矛盾、 となるからである。

前節と同じ論法で、もし $0\leq X(s,t)\leq 1$ が言えないとすると、 $X(s_n,t_n;1/n)>1$ か、 $X(s_n,t_n;1/n)<0$ となる点列 $\{s_n\}$, $\{t_n\}$ が取れることになるが、 まず $X(s_n,t_n;1/n)>1$ となる $n$ が無限にある場合を考えると、 $x_j$, $y_j$ は有界であるから、

\begin{displaymath}
X(s_n,t_n)=s_n+\frac{1}{n}(x_1(t_n)-x_2(s_n)+y_2(s_n)-y_1(t_n))>1\end{displaymath} (8)

より、
\begin{displaymath}
1\geq s_n\geq 1-\frac{1}{n}(x_1(t_n)-x_2(s_n)+y_2(s_n)-y_1(t_n))\rightarrow 1
\end{displaymath}

から $s_n\rightarrow 1$ が言える。一方、(8) より、
\begin{displaymath}
1\geq x_1(t_n)-y_1(t_n)>(1-s_n)n+x_2(s_n)-y_2(s_n)\geq x_2(s_n)-y_2(s_n)
\end{displaymath}

であり、 $s_n\rightarrow 1$ と (2) より $x_2(s_n)-y_2(s_n)\rightarrow 1$ となるので、 よって $x_1(t_n)-y_1(t_n)\rightarrow 1$ となる。 $\{t_n\}$ は有界無限点列であるから集積点を持ち、 その集積点を $t_0\in[0,1]$ とすれば、 $x_1$, $y_1$ は連続であるから $x_1(t_0)-y_1(t_0)=1$ となることが言える。 これは、$x_1(t_0)=1$, $y_1(t_0)=0$ しかありえないが、 この点 $(x_1(t_0),y_1(t_0))=(1,0)$$C_1$ 上の点で かつ $C_2$ の終点であるから、両者の共有点となる。 よって交点がないとしているので矛盾となる。

他の 3 通り ($X(s_n,t_n)<0$, $Y(s_n,t_n)>1$, $Y(s_n,t_n)<0$) の場合も、 同様の論法でいずれも (2) と $x_j$, $y_j$ の連続性から 矛盾が導きだせるので、 結局 (7) とできることが言え、 そこから連続曲線の交点の存在を示せることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2012年4月16日