6 公転による変化

この節では、(9) を元に太陽の軌道の 季節による変化を考えてみることにする。

まず、地球と太陽の距離 $ \rho$ と地球の半径 r は、 理科年表 [1] によれば $ \rho$ $ \approx$ 2.35 x 104r くらいであり、 $ \rho$ $ \gg$ r なので、 r の項を無視して考え、その場合の太陽の位置を $ \bar{{\mathrm{O}}}$ 、 回転の中心を $ \bar{{\mathrm{S}}}$ と書くことにすると、

$\displaystyle \overrightarrow{\mbox{\rm P\mbox{$\bar{\mathrm{S}}$}}}$ = - $\displaystyle \rho$$\displaystyle \mbox{\boldmath$\mu$}$sin$\displaystyle \alpha$sin$\displaystyle \beta$,   $\displaystyle \overrightarrow{\mbox{\rm P\mbox{$\bar{\mathrm{O}}$}}}
$ = $\displaystyle \overrightarrow{\mbox{\rm P\mbox{$\bar{\mathrm{S}}$}}}$ + R{$\displaystyle \mbox{\boldmath$\bar{e}_x$}$cos(t + $\displaystyle \gamma{^\prime}$) + $\displaystyle \mbox{\boldmath$\xi$}$sin(t + $\displaystyle \gamma{^\prime}$)} (10)
となる。

$ \bar{{\mathrm{S}}}$ は、P を通り $ \mu$ に平行な直線上にあり、 この直線は太陽の軌道面とは垂直になり、 $ \bar{{e}}_{y}^{}$ とは角度 $ \theta$ をなす。 この $ \bar{{\mathrm{S}}}$ の位置は、 公転によって変化する sin$ \beta$ の値とともにこの直線上を移動し、 例えば北半球 ( 0 < $ \theta$ < $ \pi$/2 ) では、 $ \mu$ は斜め上向きのベクトルになるから、 sin$ \beta$ < 0 のときにその中心は地表平面より上に、 sin$ \beta$ > 0 のときには地表平面より下にあり、 sin$ \beta$ = 0 のときに P に一致する。 つまり、 sin$ \beta$ < 0 の季節は昼の方が長く、 sin$ \beta$ > 0 の季節は夜の方が長く、 sin$ \beta$ = 0 のときが春分、秋分、ということになる。 よってこの春分、秋分は緯度 $ \theta$ にはよらず、 $ \beta$ のみで決定することがわかる。

一方太陽の軌道は、 $ \bar{{e}}_{x}^{}$ $ \xi$ を通る平面に 平行な面上での円軌道であり、 すなわち回転軸が $ \mu$ であるので、 これは緯度 $ \theta$ の分だけ傾いた軌道を描く (図 7)。 太陽軌道面の傾きは季節 $ \beta$ には関係なく、緯度によって決定する。

図 7: 太陽の軌道 (点線は各軌道の地表平面の高さ)
\includegraphics[height=0.2\textheight]{orbit1.eps}

7 でいうと、 軌道 oa は地表に出ている部分が短く (冬)、 oc は地表に出ている部分が長い (夏)。 ob が春分、秋分のときを表している。 この春分、秋分のときは、太陽は真東から登り、真西に沈み、 最も高い方向は $ \xi$ の方向に等しくなる。 円軌道面はそれぞれが平行なのであるが、 P から観測すると冬の太陽は小さい仰角、 夏の太陽は大きい仰角のところにあがることになる。

緯度による変化を考えると、 高緯度地域、例えば北極に向えば $ \theta$ $ \pi$/2 に近づくので、 $ \mu$ $ \bar{{e}}_{z}^{}$ に近づく。 よって太陽軌道面は水平面 (地表平面) に近づくので 太陽は上には上がらず、横に転がるような運動となる。 その軌道面は季節によって上下に移動するので、 その転がる軌道面が 1 日中地表平面の上に出ている季節が「白夜」 となる1

逆に赤道では、$ \theta$ = 0 であるから $ \mu$ = $ \bar{{e}}_{y}^{}$ $ \xi$ = $ \bar{{e}}_{z}^{}$ となり、 軌道面は傾かずに $ \bar{{e}}_{x}^{}$ , $ \bar{{e}}_{z}^{}$ に平行な面となる。 この場合は、中心 $ \bar{{\mathrm{S}}}$ は、常に $ \bar{{e}}_{y}^{}$ 軸上にあるので、 春分に限らず毎日昼と夜の長さが等しいことになる。 つまり赤道では、春分、秋分は「昼と夜の長さが等しい」日ではなく、 むしろ「太陽が真東から登り、真上で最高点に達し、真西に沈む日」 ということになる。 逆に春分、秋分以外では太陽は真上までは登らないので、 赤道ではこの春分、秋分の時期が最も暑い真夏、 ということになりそうである。

実は太陽の軌道の半径 R = $ \rho$$ \sqrt{{\cos^2\alpha\sin^2\beta+\cos^2\beta}}$ も 季節 $ \beta$ によって変化する。

R = $\displaystyle \rho$$\displaystyle \sqrt{{\cos^2\alpha\sin^2\beta+\cos^2\beta}}$ = $\displaystyle \rho$$\displaystyle \sqrt{{(1-\sin^2\alpha)\sin^2\beta+(1-\sin^2\beta)}}$  
  = $\displaystyle \rho$$\displaystyle \sqrt{{1-\sin^2\alpha\sin^2\beta}}$  

と変形すればわかるように、 これは sin$ \beta$ = 0 (春分、秋分) のときに最大 (R = $ \rho$ ) となり、 sin$ \beta$ = $ \pm$1 のときに最小となる。その最小値は、

R = $\displaystyle \rho$$\displaystyle \sqrt{{1-\sin^2\alpha}}$ = $\displaystyle \rho$cos$\displaystyle \alpha$ = $\displaystyle \rho$cos 23.44o = 0.92$\displaystyle \rho$

となるから、 R の季節による変化はそれほど大きいわけでもなさそうである。

竹野茂治@新潟工科大学
2008年3月24日