6 指数分布の裏がポアソン分布となること

本節では、4 節とは逆に、指数分布 $e(1/\lambda)$ の裏が ポアソン分布 $P(\lambda)$ となることを考える。

4 節と同様に、最後にその事象が起きたところを時刻 0 として 考える。 時刻 0 から 1 回目の事象が起こるまでの時間を $d_1$$(j-1)$ 回目の事象から $j$ 回目の事象までの 時間を $d_j$ とする ($j=2,3,\ldots$)。

このとき、例えば 1 時間以内に 2 回の事象が収まる 確率 $\mathrm{Prob}\{d_1+d_2\leq 1\}$ は、 1 時間以内に起こる回数 $x$ で見ると $\mathrm{Prob}\{x\geq 2\}$ に対応する ( $\mathrm{Prob}\{x=2\}$ ではない)。よって、一般に、

  $\displaystyle
\mathrm{Prob}\{d_1+\cdots+d_m\leq 1\} = \mathrm{Prob}\{x\geq m\}$ (7)
となる。

この左辺は、前節例 7 より独立な指数分布の和である ガンマ分布 $\mathop{\mathit{\Gamma}}(m,1/\lambda)$ に従うので、 その密度関数 $f_\lambda^{(m)}$ の 1 までの積分で表される。

  $\displaystyle
\mathrm{Prob}\{d_1+\cdots+d_m\leq 1\}
=\int_0^1\lambda^m\frac{z^{m-1}}{(m-1)!}e^{-\lambda z}dz
=\int_0^\lambda\frac{y^{m-1}}{(m-1)!}e^{-y}dy$ (8)
この右辺を $K_m$ と書くことにする ($m\geq 1$)。同様にして、
$\displaystyle \mathrm{Prob}\{d_1+\cdots+d_{m+1}\leq 1\} = K_{m+1}
$
となるから、(7) より、
  $\displaystyle
\mathrm{Prob}\{x=m\}
= \mathrm{Prob}\{x\geq m\} - \mathrm{Prob}\{x\geq m+1\}
= K_m - K_{m+1}$ (9)
となる。ここで部分積分により、
$\displaystyle K_{m+1}
=\int_0^\lambda\frac{y^{m}}{m!}(-e^{-y})'dy
=-\frac{\lamb...
...\lambda\frac{y^{m-1}}{(m-1)!}e^{-y}dy
=-\frac{\lambda^{m}}{m!}e^{-\lambda}+K_m
$
となるので、よって (9) より
$\displaystyle \mathrm{Prob}\{x=m\} = K_m - K_{m+1} = \frac{\lambda^{m}}{m!}e^{-\lambda}
=p_\lambda(m)
$
の、ポアソン分布の確率関数 $p_\lambda$ の形になる ($m\geq 1$)。 $m=0$ のときは、(7) で $m=1$ として 1 から引けば、
\begin{eqnarray*}\mathrm{Prob}\{x=0\}
&=&
\mathrm{Prob}\{d_1>1\}
= 1-K_1
= ...
...y}dy
= 1 +e^{-\lambda}-1
\\ &=&
e^{-\lambda} = p_{\lambda}(0)\end{eqnarray*}
となる。

よって、指数分布 $e(1/\lambda)$ を時間間隔とする独立な事象の 1 時間の 回数の分布はポアソン分布 $P(\lambda)$ であることが示された。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-08-25