4 ポアソン分布の裏が指数分布となること

次は、講義でも紹介した、ポアソン分布 $P(\lambda)$ の「裏」が 指数分布 $e(1/\lambda)$ となることを考える。 指数分布 $e(1/\lambda)$ とは、
  $\displaystyle
F_{\lambda}(d) =
\left\{\begin{array}{ll}
1-e^{-\lambda d} & (d>0)\\
0 & (d<0)
\end{array}\right.$ (2)
を分布関数とするような連続確率分布である。密度関数 $f_\lambda(d)$ は、
  $\displaystyle
f_{\lambda}(d) =
\left\{\begin{array}{ll}
\lambda e^{-\lambda d} & (d>0)\\
0 & (d<0)
\end{array}\right.$ (3)
となる。 これが、ポアソン分布の「裏」とはどういうことかを説明するが、 この表現は講義の教科書 [3] によるもので、 一般的な表現かどうかは知らない。
3 節で述べたように、ポアソン分布 $P(\lambda)$ が、 1 時間の間にある事象が起きる回数の分布になっているとき、 その事象と次に起きた事象の間の時間 $d$ は、指数分布 $e(1/\lambda)$ に 従う。
実は教科書はこの逆の形で書いてあるのであるが、 この形のものもどこかの本に書いてあった (図書館にあった本だと思うが、 どの本かは忘れてしまった)。

これについて講義では、その本に書いてあった、以下のような説明を行った。

$T>0$ に対して、時間間隔 $d$$T$ よりも大きい確率 $\mathrm{Prob}\{d>T\}=1-F_\lambda(T)$ は、 $T$ 時間の間に 1 回も起こらない確率に等しい。 $T$ 時間の間に起きる回数 $x_T$$P(\lambda T)$ に従う (前節の結果) ので、
$\displaystyle \mathrm{Prob}\{d>T\}=1-F_\lambda(T) = \mathrm{Prob}\{x_T=0\} = p_{\lambda T}(0)
$
となり、よって
$\displaystyle F_\lambda(T)
= 1-p_{\lambda T}(0) = 1-\,\frac{(\lambda T)^0}{0!}e^{-\lambda T}
= 1 - e^{-\lambda T}
$
となる。
ただ、この説明では若干 $\mathrm{Prob}\{d>T\}=\mathrm{Prob}\{x_T=0\}$ のところが 気になる。 むしろ、これは、次のように考えた方がわかりやすいような気がする。
最後にその事象が起きた時刻を 0 として、そこから $T$ 時間までの間 に 1 回でも起きれば、この $T$ 時間の間には少なくとも 1 回以上 起きることになるが、これは、最初の事象までの時間間隔で考えれば、 $d\leq T$ を意味し、一方起きる回数 $x_T$ で言えば $x_T\geq 1$ を意味する。 よって、 $\mathrm{Prob}\{d\leq T\}=\mathrm{Prob}\{x_T\geq 1\}$ となり、 これを 1 から引けば、 $\mathrm{Prob}\{d>T\}=\mathrm{Prob}\{x_T=0\}$ となる。
あとは上の計算と同じである。 「最後にその事象が起きた時刻を 0」とすることで、 どこに起点を置いて考えるか、どの時間間隔を見るかが明確になって、 わかりやすくなるように思う。 そしてこれなら $\mathrm{Prob}\{d>T\}=\mathrm{Prob}\{x_T=0\}$ もある程度納得できると 思う。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-08-25