2 定式化

自由度 $n$ のカイ自乗分布 $\chi^2(n)$ は、 $u_1,\ldots,u_n$$N(0,1)$ に従う確率変数で、かつ独立であるとき、
  $\displaystyle
v = u_1^2+\cdots +u_n^2$ (1)
が従う確率分布である。

本稿で証明するのは、 $x_1,\ldots,x_n$ を正規母集団から取ったデータ、 すなわち $x_k$ $N(\mu,\sigma^2)$ に従う確率変数でかつ それらが独立であるとき、標本平均 $\bar{x}$, 平方和 $S$

  $\displaystyle
\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n x_k,
\hspace{1zw}S = \sum_{k=1}^n (x_k-\bar{x})^2$ (2)
に対して、
  $\displaystyle
\frac{S}{\sigma^2}\sim \chi^2(n-1)$ (3)
となること、である。

$n=2$ のときは

  $\displaystyle
u_1 = \frac{1}{\sqrt{2}\,\sigma}(x_1-x_2)$ (4)
によって、$n=3$ のときは
  $\displaystyle
u_1 = \frac{1}{\sqrt{2}\,\sigma}(x_1-x_3),
\hspace{1zw}u_2 = \frac{1}{\sqrt{6}\,\sigma}(-x_1+2x_2-x_3)$ (5)
によって
  $\displaystyle
\frac{S}{\sigma^2} = \sum_{k=1}^{n-1}u_k^2$ (6)
と書け、かつ $u_k\sim N(0,1)$ でかつ $u_1,\ldots,u_{n-1}$ が 独立であることを講義では紹介した (が、証明はしていない)。

これと同様に、一般の $n$ に対しても、 (6) となるような $u_k$ を、 $x_1,\ldots,x_n$ の 1 次式として構成し、それが独立でかつ $N(0,1)$ に 従うことを示すことで (3) を示す。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-08-23