6 合成関数の微分の証明

全微分可能性の応用に一つに、合成関数の微分の公式の証明がある。


定理 2

$x=x(t)$, $y=y(t)$$t=t_0$ で微分可能で、 $x(t_0)=a$, $y(t_0)=b$ で、 $f(x,y)$$(x,y)=~(a,b)$ で全微分可能であるとき、合成関数
$\displaystyle g(t) = f(x(t),y(t))
$
$t=t_0$ で微分可能で、その微分係数 $g'(t_0)$ は、
  $\displaystyle
g'(t_0) = f_x(a,b)x'(t_0)+f_y(a,b)y'(t_0)
$ (18)
となる。
なお、通常は微分係数ではなく、導関数、 すなわちある範囲の $t$ に関する定理として述べられ、 (18) も、
  $\displaystyle
\frac{dg}{dt} = \frac{\partial f}{\partial x}\,\frac{dx}{dt} + \frac{\partial f}{\partial y}\,\frac{dy}{dt}$ (19)
のように書かれることが多い。 さらに、定理の条件も「全微分可能」ではなく、 十分条件である「偏微分可能で偏導関数が連続」という形で 述べられることが多い。1

しかし、この合成関数では $t$ の変換に伴い $x,y$ の両方が変化するため むしろ $f$ の全微分を考えるのが自然であるし、 さらに (19) の式は (1) の 式にも似ているため、全微分を意識させるこの定理 2 の 形の方が本来はいいだろうと思う。

では定理 2 の証明を行う。 $f$$(a,b)$ での全微分可能性より、$(a,b)$ の近くで、

\begin{eqnarray*}f(x,y) - f(a,b)
&=&
f_x(a,b)(x-a)+f_y(a,b)(y-b)
\\ &&
+ \v...
...arrow (0,0)}{\varepsilon (h,k)}
&=&
\varepsilon (0,0)
\ =\
0\end{eqnarray*}
となる。$a=x(t_0)$, $b=y(t_0)$ より、
\begin{eqnarray*}\lefteqn{g(t) - g(t_0)
\ =\
f(x(t),y(t)) - f(x(t_0),y(t_0))
...
...n (x(t)-x(t_0),y(t)-y(t_0))\sqrt{(x(t)-x(t_0))^2+(y(t)-y(t_0))^2}\end{eqnarray*}
となり、よって
\begin{eqnarray*}\frac{g(t) - g(t_0)}{t-t_0}
&=&
f_x(a,b)\,\frac{x(t)-x(t_0)}{...
...t_0)}{t-t_0}\right)^2
+\left(\frac{y(t)-y(t_0)}{t-t_0}\right)^2}\end{eqnarray*}
と書ける。ここで、 $t\rightarrow t_0$ とすれば、 平方根の部分は
$\displaystyle \sqrt{x'(t_0)^2+y'(t_0)^2}
$
に収束するため有界であり、 よって $\varepsilon $ を含む項は 0 に収束し、 この右辺は (18) の右辺に収束する。 これで定理 2 が示されたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-06-19