本節でも はすべて異なる実数とし、
とする。ここで、 は一般には 1 以上の整数である。まずは前節同様に、先に部分分数分解の形から を どのような形で表せばよいかを考える。
この場合の は、 部分分数分解の原理 ([2]) により
と分解される。ここで、 は の整式であり、 その の でのテイラー展開からわかるが、 それは分子が定数の(12) の両辺に をかけると、
となる。すなわち、今度は分子 を (, ) の一次式で表すことが目標となる。 これは、一般エルミート補間 ([3],[4]) に より可能となる。「一般エルミート補間」は、関数 に対して、 その での値やその導関数の値 (, ) を使って を多項式近似する方法であり、 ラグランジュ補間と同様に、
に対して (, ) となる 次以下の整式 は一意に決定する。 その表現式、すなわち の係数 を、 と の微分係数値 で 表すことを考える。まず、(15) の、 に関する和の各項を とする:
このとき, 各 , および なる に対して には 因数の に が含まれるので、任意の実数 (, ) に対し、 となる 次以下の 整式 は常に存在し、そしてそれは (15) に (17) を代入したものになる (それのみである)。
逆に 次以下の整式 は、 (, ) とすれば、 (15) に(17) を代入 した形に変形される。
証明は命題 2 とほぼ同じなので省略する。
これで、 に 1 次式の累乗が含まれている場合の の 部分分数分解も、原理的には、
を計算すれば、未定係数法を使わなくても (13) の 両辺を で割ることで (12) の形に求まることに なるのだが、ただ一般には (18) の計算は容易ではなく、 未定係数法より楽に求まるかというと必ずしもそうではない。 むしろ特別な場合、例えば の場合や、すべての が 2 以下の場合を 除けば、一般エルミート補間の計算はかなり困難になる。
は 、 よって
これは多少改善は可能で、 を直接求める 代わりに、
なお、未定係数法による部分分数分解の場合は、
しかしこれも多少改善ができ、 (19) を展開して係数比較をする代わりに 代入法と微分を組み合わせることで係数を求めることができる。 例えば、 には があるため はそれぞれ に等しく、よって、
や についても同様に、代入法と微分を使うことで、 各 毎に分離して係数を求められるので、 単純な係数比較よりは多少楽になる。
そして、この計算を見ればわかるが、これは一般エルミート補間の 改良版の方の計算と実質的に同等であり、 よって部分分数分解に一般エルミート補間を利用する方法も、 それほどメリットがあるわけではないことがわかる。
竹野茂治@新潟工科大学