3 対数の微分の形

まず、未定係数法を用いなくても簡単に部分分数分解できる、 特別な形を紹介する。


命題 1

整式 $f(x)$ $\displaystyle f(x)=\prod_{j=1}^n f_j(x)
=f_1(x)f_2(x)\cdots f_n(x)$ の整式の積で、 $g(x)=f'(x)$ のとき、商 $g(x)/f(x)$

$\displaystyle
\frac{g(x)}{f(x)}
= \frac{f_1'(x)}{f_1(x)} + \frac{f_2'(x)}{f_2(x)}
+\cdots+\frac{f_n'(x)}{f_n(x)}
$ (3)
と分解される。


証明

$\displaystyle \log\vert f(x)\vert = \log\left\vert\prod_{j=1}^n f_j(x)\right\vert
=\sum_{j=1}^n\log\vert f_j(x)\vert
$
より、両辺微分すれば、
$\displaystyle \frac{f'(x)}{f(x)}
= \frac{f_1'(x)}{f_1(x)} + \frac{f_2'(x)}{f_2(x)}
+\cdots+\frac{f_n'(x)}{f_n(x)}
$
となる。


例えば、 $I=(3x^2-6x+1)/(x-3)(x^2+1)$ は、

$\displaystyle \{(x-3)(x^2+1)\}'
= (x^3-3x^2+x-3)'
= 3x^3-6x+1
$
なので、命題 1 より
$\displaystyle I = \frac{\{(x-3)(x^2+1)\}'}{(x-3)(x^2+1)}
= \frac{(x-3)'}{x-3} + \frac{(x^2+1)'}{x^2+1}
= \frac{1}{x-3} + \frac{2x}{x^2+1}
$
と部分分数分解されることになる。

実際、 $3x^2-6x+1 = x^2+1 + 2x(x-3)$ より,

$\displaystyle I = \frac{x^2+1 + 2x(x-3)}{(x-3)(x^2+1)}
= \frac{1}{x-3} + \frac{2x}{x^2+1}
$
となる。 なお、この命題 1 では $f_1(x),\ldots,f_n(x)$ は 互いに素である必要もない。

竹野茂治@新潟工科大学
2024-12-06