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3 偶数次、奇数次による対称性

$h=\bar{g}$ により (2) は、
\begin{displaymath}
f(x^2)=g(x)(x-i)^m+\bar{g}(x)(x+i)^m\end{displaymath} (5)

になるが、左辺が偶数次の項のみなので、 これを利用すると $g$ の形はもう少し限定することができる。

容易にわかるように、 $(x+i)^m$ は、

\begin{displaymath}
(x+i)^m = p(x)+iq(x) = \left\{\begin{array}{ll}
\alpha(x^2...
...+ i\delta(x^2) & (\mbox{$m$\ が奇数のとき})
\end{array}\right.\end{displaymath} (6)

のように書ける。 ここで、$\alpha(y)$, $\beta(y)$, $\gamma(y)$, $\delta(y)$ は 実数係数の整式で、その次数は
\begin{displaymath}
\deg\alpha = \frac{m}{2},
\ \deg\beta = \frac{m-2}{2},
\ \deg\gamma = \frac{m-1}{2},
\ \deg\delta = \frac{m-1}{2}\end{displaymath} (7)

となる。

$g(x)$ の係数を実数部分と虚数部分に分離して、 $g(x)=g_1(x)+ig_2(x)$ ($g_j(x)$ は実数係数の整式) とすると、 $\bar{g}(x)=g_1(x)-ig_2(x)$ であり、 また $(x-i)^m=\overline{(x+i)^m}=p(x)-iq(x)$ であるから、 (5) より、

\begin{displaymath}
f(x^2)=(g_1+ig_2)(p-iq)+(g_1-ig_2)(p+iq)=2pg_1+2qg_2\end{displaymath} (8)

となる。

$m$ が偶数の場合、 $g_j$ は高々 $(m-1)$ 次の多項式だから、それを偶数次と奇数次に分けて

\begin{displaymath}
g_j(x) = s_j(x^2) + xt_j(x^2)\hspace{1zw}(j=1,2)\end{displaymath} (9)

のようにすると、

\begin{displaymath}
\deg s_j\leq \frac{m-2}{2},\ \deg t_j\leq \frac{m-2}{2}
\end{displaymath}

であり、(6), (8) より、

\begin{eqnarray*}f(x^2)
&=&
2pg_1+2qg_2
\\ &=&
2\alpha(x^2)\{s_1(x^2)+xt_1...
...eta(x^2)t_2(x^2)\}
+2x\{\alpha(x^2)t_1(x^2)+\beta(x^2)s_2(x^2)\}\end{eqnarray*}

となる。左辺は偶数次の項しかないので、右辺の奇数次の項の和は 0、 すなわち

\begin{displaymath}
\alpha(x^2)t_1(x^2)+\beta(x^2)s_2(x^2) = 0
\end{displaymath}

が成り立つことになる。よってすべての $y$ に対し、
\begin{displaymath}
\alpha(y)t_1(y)+\beta(y)s_2(y) = 0\end{displaymath} (10)

が成り立つ。

しかし、後で示すように、$p(x)$$q(x)$ は互いに素なので、 $\alpha(y)$$\beta(y)$ も互いに素であり、この式の多項式の次数は

\begin{displaymath}
\deg\alpha =\frac{m}{2},
\ \deg\beta=\frac{m-2}{2},
\ \deg s_2\leq\frac{m-2}{2},
\ \deg t_1\leq\frac{m-2}{2}
\end{displaymath}

となっている。(10) より、

\begin{displaymath}
\alpha(y)t_1(y)=-\beta(y)s_2(y)
\end{displaymath}

であり、左辺の因子 $\alpha(y)$ は右辺の因子でもあり、 $\alpha$$\beta$ は互いに素なので、 $\alpha$$s_2$ の因子でなければいけないが、 次数を比較すれば $s_2=0$ でなければならないことがわかる。 よって、$t_1=0$ にもなる。

結局、$m$ が偶数の場合は、

\begin{displaymath}
g_1(x) = s_1(x^2),\hspace{1zw}g_2(x)=xt_2(x^2)
\end{displaymath}

となるので $g(x)$
\begin{displaymath}
g(x) = g_1(x) + ig_2(x) = s_1(x^2) + ixt_2(x^2)\end{displaymath} (11)

の形になることになる。

同じように $m$ が奇数の場合を考えてみると、 $g_j$ は高々 $(m-1)$ 次の多項式だから、 同様に (9) のように分けると、$s_j$, $t_j$ の次数は

\begin{displaymath}
\deg s_j\leq \frac{m-1}{2},\ \deg t_j\leq \frac{m-3}{2}
\end{displaymath}

となる。(6), (8) より、

\begin{eqnarray*}f(x^2)
&=&
2pg_1+2qg_2
\\ &=&
2x\gamma(x^2)\{s_1(x^2)+xt_...
...ta(x^2)s_2(x^2)\}
+2x\{\gamma(x^2)s_1(x^2)+\delta(x^2)t_2(x^2)\}\end{eqnarray*}

となり、この場合は
\begin{displaymath}
\gamma(y)s_1(y)+\delta(y)t_2(y)=0\end{displaymath} (12)

が成り立つ。 $p(x)$$q(x)$ が互いに素なのでこの $\gamma(y)$$\delta(y)$ も 互いに素で、次数は

\begin{displaymath}
\deg\gamma =\frac{m-1}{2},
\ \deg\delta=\frac{m-1}{2},
\ \deg s_1\leq\frac{m-1}{2},
\ \deg t_2\leq\frac{m-3}{2}
\end{displaymath}

であるから、 $\gamma s_1=-\delta t_2$ を考えると $\gamma$$\delta$ は互いに素なので $\gamma$$t_2$ の因子でなければならないが、 次数を比較すればそれは $t_2=0$ を意味し、よって $s_1=0$ にもなる。

よって、$m$ が奇数の場合は、

\begin{displaymath}
g(x) = g_1(x) + ig_2(x) = xt_1(x^2) + is_2(x^2)
\end{displaymath}

となることになる。

以上をまとめると、以下のようになる。


命題 1

(5) を満たす高々 $(m-1)$ 次の整式 $g(x)$ は、

でなければならない。



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竹野茂治@新潟工科大学
2006年6月2日