8 テイラー展開
本節では、双曲線関数のテイラー展開 (マクローリン展開) を紹介する。
良く知られているように、
,
のマクローリン展開は
となるが、
,
のマクローリン展開は
であるから、これらを足し引きすれば、
,
のマクローリン展開
が得られる。
なお、これらは (40), (41) に
を代入して 7 節の (29), (31) を用いても得ることができる。
のマクローリン展開は、
微分を使って定義通りに計算するのはかなり面倒なので
例えば以下のように計算すればよい。
であり、
では
なので、
となるから、
となるが、ここに (40), (41) を代入すれば、
![\begin{eqnarray*}\lefteqn{\tan x}
&=&
\left(x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}...
...ight)x^5+\cdots
&=&
x+\frac{x^3}{3}+\frac{2}{15} x^5+\cdots\end{eqnarray*}](img221.gif)
のようになる。
は、(29), (31) より
なので、
のようにして
の展開式から求めることができる。
次は逆関数のマクローリン展開を考える。
これは、導関数の展開を先に考えると容易に求められる。
例えば
のマクローリン展開は、
より、この両辺を 0 から
まで積分すれば、
なので、
![\begin{displaymath}
\arctan y = \frac{y}{1}-\frac{y^3}{3}+\frac{y^5}{5}-\frac{y^7}{7}+\cdots
\hspace{1zw}(-1<y<1)\end{displaymath}](img227.gif) |
(46) |
となる。これと同様にすれば、
より、
![\begin{displaymath}
\mathop{\rm arctanh}y = \frac{y}{1}+\frac{y^3}{3}+\frac{y^5}{5}+\frac{y^7}{7}+\cdots
\hspace{1zw}(-1<y<1)\end{displaymath}](img229.gif) |
(47) |
が得られる。
他の逆関数は、
の展開式を利用すればよいが、
一般二項定理により
![\begin{displaymath}
\frac{1}{\sqrt{1-x}}=(1-x)^{-1/2}=\sum_{n=0}^\infty (-1)^n\...
...array}{c} -1/2 n \end{array}\right)x^n
\hspace{1zw}(-1<x<1)\end{displaymath}](img231.gif) |
(48) |
であり、
となるが、
と書くことにすると、結局
に対して
と書けることになり、(48) は、
![\begin{displaymath}
\frac{1}{\sqrt{1-x}}=\sum_{n=0}^\infty\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!} x^n
\hspace{1zw}(-1<x<1)\end{displaymath}](img236.gif) |
(49) |
となる。よって、
を 0 から
まで積分すれば
![\begin{displaymath}
\arcsin y = \sum_{n=0}^\infty\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!} \frac{y^{2n+1}}{2n+1}
\hspace{1zw}(-1<y<1)\end{displaymath}](img238.gif) |
(50) |
が得られ、
を 0 から
まで積分すれば (17) より
![\begin{displaymath}
\mathop{\rm arcsinh}y
= \sum_{n=0}^\infty (-1)^n\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!} \frac{y^{2n+1}}{2n+1}
\hspace{1zw}(-1<y<1)\end{displaymath}](img240.gif) |
(51) |
が得られる。
あとは
の展開だけであるが、
は
の関数で、
しかも
では微分可能ではない (微分係数は
) のでこのままテイラー展開はできない。
その代わりに
として、
の
に関する展開を考えてみることにする (
)。
(15) より、
となるが、合成関数の微分 (
) と (18) より、
となる。ここで、(49) より
であるから、
より、
となる。この両辺を
から
まで積分すると、左辺は
となるが、(52) より
なので、
となる。これを
に戻せば、結局
![\begin{displaymath}
\mathop{\rm arccosh}y = \log y + \log 2
-\sum_{n=1}^\infty...
...)!!}{(2n)!!} \frac{1}{2n} \frac{1}{y^{2n}}
\hspace{1zw}(y>1)\end{displaymath}](img258.gif) |
(53) |
が得られる。
これは、厳密にはテイラー展開ではないが、
を中心とするようなある種の展開 (漸近展開) になっている。
竹野茂治@新潟工科大学
2010年3月19日