なお、この の「arc」とは「円弧」のことで、 角度は弧度法では単位円の弧の長さを意味するので、 「三角比 に対する弧の長さ」という意味で のように呼ぶわけである。
もう一つ逆関数を表す流儀として , , の形の記法もよく使われるが、これは 乗と紛らわしい (もちろん と とは全く異なる) ので、本来は使わない方がいいと思うのだが、 基礎数理の教科書 [1] では の記法を採用している1。
双曲線関数の場合、例えば は、 から への単調増加関数なので、 定義域を制限せずにそのまま逆関数が作れる。 それを、三角関数の逆関数と同様に (ハイパボリックアークサイン)、 または (インバースハイパボリックサイン) と書くようである。
ただし、この「arc」には「弧」の意味はなく、 つまり実際になんらかの曲線の長さを表しているわけではなく、 単に三角関数の逆関数に記号を合わせて「arc」と書いているだけのようである。 実際、 で表される双曲線の の部分の弧の長さ は、
と は全く同じ関係を意味しているので、 逆関数 のグラフは、単に の見方を変えて、 横軸と縦軸を入れ換えただけのものになる (図 4)。
の場合は単調ではないので、 に制限して逆関数を考えることになる。 それを 、あるいは と書く ()。
は、 上の単調増加関数であり、 その値域は なので、 逆関数 は 上の関数となる。
これらの逆関数は、元々の関数が指数関数の簡単な式で表されるので、 逆関数自体も比較的やさしい式で表すことができる。 例えば、 の場合、
(14)
の場合も同様で、
(15)
の場合は、
(16)
次に、それぞれの微分を計算してみよう。今求めた (14), (15), (16) を合成関数の微分で計算してもいいのであるが、ここでは逆関数の微分法
(17)
(18)
(19)
逆にこれらを積分の公式の形に書き直せば、 として、
(20)
(21)
(22)
(23)
(24)
これらの公式の大半は , などの置換により得られるが、 (21) は、 の場合は であり、 合成関数の微分により、
竹野茂治@新潟工科大学