5 最後に

微分の定義に使われている「極限」の考え方は、 考え方としては工学などでも色々な場面に出てくるが、 工学で極限の具体的な計算を要求されることは、 もちろん広義積分等全くないわけではないだろうが、 そんなに多くないのではないかと思う。

微分の公式にしても、ほとんどの工学の学生にとっては、 その証明まできちんと論理的に説明できる必要はなく、 むしろその結果である微分の公式が使えることの方が重要度は高い。

となれば微分の公式などの「証明・説明」も、厳密さよりも、 むしろその雰囲気がわかる形の方がよいだろうと思う。

講義では、教科書に書かれている色々な「証明」で そのような工夫を考えているが、この微分の公式についても、 こういう説明もあるのではないかと思い、 参考資料として書いて配布して説明したこともある。

しかし、教科書から完全に離れて講義でこの手法で 全面的に説明するだけの勇気はまだない。 もしそのような教科書があれば考えなくもないが、 1 節に書いたように日本では しばらくそういう教科書が出るようには思えない。

竹野茂治@新潟工科大学
2015年12月7日