2 平行移動とスケール変換

以下に、$x^\alpha$, $(x+p)^\alpha$ のテイラー展開を (1) で求める方法について説明する。

まずは、平行移動によりテイラー展開がマクローリン展開に帰着できることを示す。 「$f(x)$$x=c$ でのテイラー展開」は、

$\displaystyle
f(x) = \sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-c)^n$ (3)
を意味するが、これは $x-c=t$ とすれば、
$\displaystyle
f(t+c) = \sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(c)}{n!}t^n$ (4)
となり、「$f(t+c)$ のマクローリン展開」となる。 すなわち、「$f(x)$$x=c$ でのテイラー展開」は、 「$f(t+c)$ のマクローリン展開」に $t=x-c$ を代入して得られることになる。

例えば、$f(x)=x^\alpha$$x=c$ ($c\neq 0$) でのテイラー展開は、 $x-c=t$ とすれば $f(t+c)=(t+c)^\alpha$ のマクローリン展開に帰着され、 $f(x)=(x+p)^\alpha$$x=c$ ($c\neq -p$) でのテイラー展開は、 $x-c=t$ とすれば $f(t+c)=(t+c+p)^\alpha$ のマクローリン展開に帰着される。 よって、あとは $(x+p)^\alpha$ ($p\neq 0$) のマクローリン展開が できればよいことになる。

次はスケール変換であるが、 「$f(ax)$ のマクローリン展開」は、

$\displaystyle \frac{d^n}{dx^n}f(ax) = a^nf^{(n)}(ax)
$
より、
$\displaystyle
f(ax) = \sum_{n=0}^\infty\frac{a^nf^{(n)}(0)}{n!}x^n
= \sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(0)}{n!}a^nx^n$ (5)
となるが、これは「$f(t)$ のマクローリン展開に $t=ax$ を代入したもの」に 等しい。

これを用いると、

$\displaystyle
(x+p)^\alpha = p^\alpha\left(1+\frac{x}{p}\right)^\alpha$ (6)
なので、(5) により、 (6) のマクローリン展開は、 (1) の $x$$x/p$ を代入して $p^\alpha$ 倍すればよいことがわかる。

これで、平行移動とスケール変換と (1) により $x^\alpha$, $(x+p)^\alpha$ のテイラー展開がすべて得られることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-11-16