3 正の勾配への帰着

本稿では、
\begin{displaymath}
\tan\theta = H\end{displaymath} (2)

を満たす $\theta$ ( $-\pi/2<\theta<\pi/2$) を求めることを考えることとする。 もちろん (2) は、
\begin{displaymath}
\arctan H=\theta\end{displaymath} (3)

と書くこともできるので、 これに (1) の展開式を用いれば良さそうであるが、 (1) は $\vert H\vert<1$ でないと使えないし、 $\vert H\vert$ が 1 より小さくても 1 に近い場合は (1) は誤差が大きく、 精度を上げるにはかなり多くの項を取らなければいけない。 よって本稿では、三角関数の性質を用いることで、 この (1) をそれなりに小さな $x$ に対して用いれば 済むようにすることを考えていく。

まず、正の勾配に帰着させることを考えよう。もし、$H<0$ であれば、 $-H=H_1$ に対して

\begin{displaymath}
\theta_1=\arctan H_1
\end{displaymath}

を求めれば、
\begin{displaymath}
\tan\theta = H = -H_1 = -\tan\theta_1=\tan(-\theta_1)
\end{displaymath}

より $\theta=-\theta_1$ と求めることができるので、 アークタンジェントは 0 以上の勾配のみに対して使えばいいことになる。 言いかえれば、$H<0$ の場合は、
\begin{displaymath}
\theta=\arctan H = -\arctan(-H)
\end{displaymath}

として求めれば良いことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年1月18日