しかし、一方でそちらから定義すると、 5 に書いたようにその向きがどうなるかを 説明するのが難しい。
もちろん、外積の図形的な性質自体が工学や物理への応用に取っては大事、 ということもあるのであろうが、そのような難点もあって、 教科書 [1] は成分からではなく、 図形的な定義を採用しているのではないかと思う。
しかし、手近なベクトル解析、線形代数の本を 15 冊位調べたところ、 外積の定義は図形的な定義によるものと成分によるものとがほぼ半々であった。 そして、成分による定義を採用している本を見ると、 もちろん外積の図形的な性質も紹介しているが、 その向きについては「右ねじを回して進む向きになる」 という事実だけを述べるにとどまってその理由は書いてないものがほとんどであり、 中には、向きには触れていないものすらあった。
その中で [2] のみが 5 節に書いたような説明をしていた (本当は少し違うのであるが、本質的にはほぼ同等)。 この説明が、学生にとってわかりやすいものかどうかは議論があると思うが、 このようにすれば一応成分から定義しても、 図形的な性質の説明を一通りできないわけではないことがわかる。
図形的に外積を定義しても、 学生に出す実際の計算問題としては成分計算が主であるから、 1 節に書いたような質問が出るのも自然なので、 成分から定義してこのような説明を行うのも それなりに意味があるようにも思える。
竹野茂治@新潟工科大学