4 3 次の正方行列の場合

3 次の正方行列 $A$ の場合は、固有多項式 $f_A(x)$
$\displaystyle f_A(x)=x^3-ax^2-bx-c
$
とすれば、ケイリー・ハミルトンの公式は
  $\displaystyle
A^3 = aA^2+bA+cE$ (7)
となるので、$A^2$ の積の計算は必要だが、$A^n$
  $\displaystyle
A^n = a_nA^2+b_nA+c_nE$ (8)
の形で表すことができる。やり方は 2 次の場合と同様である。 この係数の漸化式を求めると、
\begin{eqnarray*}A^{n+1}
&=&
a_{n+1}A^2+b_{n+1}A+c_{n+1}E
\\ &=&
A(a_nA^2+b_...
...(aA^2+bA+cE)+b_nA^2+c_nA
\\ &=&
(aa_n+b_n)A^2+(ba_n+c_n)A+ca_nE\end{eqnarray*}
となるので、漸化式は、
  $\displaystyle
a_{n+1}=aa_n+b_n,\hspace{1zw}b_{n+1}=ba_n+c_n,\hspace{1zw}c_{n+1}=ca_n,\hspace{1zw}(a_1,b_1,c_1)=(0,1,0)$ (9)
となって、これを使えば順次係数が決定できる。 例えば、
$\displaystyle A = \left[\begin{array}{rrr}1&2&3\\ 3&0&-2\\ 0&-1&4\end{array}\right]
$
の場合、固有多項式は、
\begin{eqnarray*}f_A(x)
&=&
\vert xE-A\vert
=
\left\vert\begin{array}{ccc}...
...-6(x-4)
\\ &=&
x^3-5x^2+4x+9-2x+2-6x+24
\\ &=&
x^3-5x^2-4x+35\end{eqnarray*}
となるので、 $A^3-5A^2-4A+35E=O$, すなわち、
$\displaystyle A^3=5A^2+4A-35E
$
となるから、(8) の係数は、漸化式
$\displaystyle a_{n+1}=5a_n+b_n,\hspace{1zw}b_{n+1}=4a_n+c_n,\hspace{1zw}c_{n+1}=-35a_n,
\hspace{1zw}(a_1,b_1,c_1)=(0,1,0)
$
によって求められることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2023-11-27