三角関数の定義を変える方法とは、直角三角形の辺の比による定義ではなく、 マクローリン級数 (例えば [1]) や、 微分方程式の解として定義する方法であり、 それにより (1) や三角関数の導関数を 円の面積などとは無関係に導く方法である。 これは、もちろんかなり大がかりだし、 初学者に学ばせるためには適切な定義ではなく、 あくまで数学の世界での論理的な理論の構築のためだけの方法に過ぎない。
一方、(1) の証明で扇形の面積を使わない方法とは、 より の定義に近い弧長を用いる方法で (例えば [2])、 良くみるのは、
(14)
(15)
ただ、この方法にもやや問題が含まれている。 そのひとつは、「曲線の長さ」も折れ線の極限として定義され、 面積同様積分で計算するものになるので、 そこに置換積分を使うなら同じ循環論法になるのでは、という話である。 しかし、そういう話になると、それは円周率の定義 (2) や、 弧度法自体の見直しにも関わる大きな話で、 どこまでを認めて、どこからを示すのかを初めから考え直さないと いけないことになってしまう。
もう一つ別な問題があるが、 それは、(14) は本当に明らかだろうか、という話である。 それは私も以前から疑問であり、 あまりそれに触れている物を見たことがなかったので不思議に思っていた。 「AC 弧 BC」の方は確かに明らかだが、 問題は「弧 BC BD」の方で、これはそう明らかとは思えない。 実際、この弧長による (1) の証明を 採用している [2] でもこの部分に詳しい証明 (そしてやや面倒な証明) を書いているようである。 となると、それを高校や大学の教育現場で導入することは難しいような気がする。
しかし、この不等式 (14) は、 以下の不等式に変えたらどうだろうか。
(16)
(16) は、数式では
(17)
竹野茂治@新潟工科大学