2 循環論法
まず、(1) にまつわる循環論法について説明しておく。
元々「円周率 ()」は、円の面積から定義するものではなく、
円の円周と直径の比として定義される:
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(2) |
よって、
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(3) |
であるという事実は円周率の定義ではなく、
(2) から導かなければいけない「定理」である。
現代数学では、円のように、
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(4) |
と考えられているので、その立場からすれば、
半径 の円の面積 は定積分
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(5) |
によって定義されることになる。
この積分の計算には、
の
ような置換積分が用いられ、
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(6) |
より、
となる。
さて、(1) の証明であるが、
まず、
に対しては、
とすれば
となり、
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(8) |
となるので、
の方だけを考えればよい。
そして、その極限が 1 にあることを示すには「はさみうちの原理」を
使うのであるが、扇形の面積を使う方法は以下の通り (図 1)。
中心角 (ラジアン)、半径 1 の扇形で、
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(9) |
という面積に関する不等式を考えれば、
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(10) |
なので、 で割れば、
となり、
とすれば、はさみうちの原理によって
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(11) |
が得られる、という論法である。
OAC の代わりに OBC (=) を使うこともあるが、
違いはほとんどない。
そして、(1) を元にして、
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(12) |
が得られ、(1) と (12) により、
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(13) |
と の導関数が得られる。
さて、ここまでの話でどこが循環論法かと言えば、
それは (9) で使用した扇形の面積である。
扇形 OBC の面積が になる、ということには、
円の面積の公式 (3) を使っていることになるが、
円の面積は (5) によって定義され、
それは (7) で見たように の導関数を必要とし、
の導関数を導くには (1) が必要である、
という構造、すなわち (1) を導くのに (1) が必要になってしまっているのが循環論法である、
という話である。
竹野茂治@新潟工科大学
2015年12月7日