6 最後に

今回の内容は、なるべく極限を用いない証明であるが、 遠回りに思えるものもあるので、 必ずしもこちらの方がわかりやすいとはいえない。

また、三角関数の射影による部分や、対数グラフの長さの変化の部分では、 厳密には短い長さの変化の「極限」を見ていることになるので、 極限を全く使っていないわけではない。

ただ、例えば三角関数の微分の説明は、 割と直感的にわかるようなものなので、 それなりに意味はあるのではないかと思う。 これは後半の方は早くに考えていたのであるが、 4 節でも述べたように 紙を丸めてグラフを作り直すという考えを [2] で 見つけてから今回の方法を思いついた。

しかし、特に巾乗は極限を用いれば、$x^2$, $x^3$ は二項定理により 簡単に導関数が導けるのであるが、 極限を用いないと本稿で見たようにそれほど易しくはない。 積の微分が使えればまだなんとかなるが、 今のところ、5 節の両対数グラフを使う以外には あまりいい方法を思いついていない。 $f(x)=x^\alpha$ に対する $f'(1)$$F(\alpha)$ として、 $F$ に対する性質を導いて、そこから $f'(1)$ を求める、 という方法もなくはないが、かなり遠回りになる気がする。

今後は、積や合成関数などの微分の公式や、 積分についても同様のことができないか考えたい。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年4月11日