通常高校の教科書では一般角の三角関数の定義は、 単位円の円周上の点の座標と中心角の関係による。 今回は、後の説明を考えて、 次のように三角関数のグラフを以下のように考える。 なお、以下の方法による三角関数のグラフの作成は、 以前私が使用していた教科書 [2] の表紙で紹介されていたものである。
縦横 の長さの正方形の透明なフィルムの対角線に 1 本線を引き、 そのフィルムの横軸を ( )、 縦軸を ( ) とする (図 3 左)。 この場合対角線は となる。 このフィルムの 方向を丸めて円筒にして (図 3 右上)、 そのつなぎ目が水平軸となるように側面から見ると、 元の対角線が のグラフの形の曲線として現れること が以下のようにしてわかる。
この円筒を側面として見る際、つなぎ目が手前の真ん中に来るようにして、 その元の 軸 (と同じ向きの軸) を丁度 軸と見て、 見た目の縦方向を 軸と見ることにする (図 3 右下)。 円筒断面 (または底面) の円は、円周が なので半径 1 の円となる。 よって、この円筒は は , は の範囲に収まっている。
この曲線上の の点を考えると、 それは元の正方形では という点に対応する。 よってその点は円筒断面の円では出発点 (つなぎ目) から言うと 円弧が だけ進んだ点ということになり、 その円の半径は 1 なので、中心角としてラジアン単位で だけ 進んだ点 () ということになる (図 4)。 よって、そのときの高さ ( 座標) は となるので、 平面では元の対角線は のグラフを表すことがわかる。
次は、このグラフ の傾きを考えてみる。 元のフィルムの上の対角線は、 なので傾きは 1 であるが、 のグラフはそれを丸めてつなぎ目の方向から見たもの、 すなわち 平面への射影となっていて、その際に傾きが変化する。 丸めて射影しても 方向から 方向への線分の長さの 変化はないので、変化があるのは 方向から 方向への対応であり、 その分傾きが変わることになる。
, () の位置では、 方向の短い長さ は 円筒では円筒断面の短い円の弧の長さになり、 それで射影した 方向ではほぼ という 長さに変わるので、 倍に縮小されることになる (図 5)。
ここから、 の での傾きは になることがわかる。
では、対角線は裏側の面に行って負の傾きになり、 方向の長さ は 方向には となる。よって、 での傾きは、 となる。 , の場合も 同様に での傾きが となることが示される。
なお、この方法だと、 では、円筒を真正面から見ているので、 方向への長さも変化はなく、 よって傾きが 1 のままであることが直感的にわかるが、 これは の での傾きが 1、極限で表現すれば
の導関数 (13) の方は、円筒のつなぎ目を上にして 横から見れば のグラフになるので、 上と同じ考察をそれに対して行ってもよいが、 のグラフを 方向に 平行移動すれば グラフになるので、 (12) より のグラフの での 傾きは の での値となり、
なお、上のような「ほぼ 」よりもう少し直接的な説明も可能である。 それは、元々のフィルムに底辺と高さが 1 の直角二等辺三角形の三角定規を貼る、 と考える方法である (図 6)。
元々の図の、 の位置を左下にして三角定規の底辺部分のみテープで 止める。当然定規の傾きは 1 であるから丸める前は黒線に接している。 このままフィルムを丸めて三角関数のグラフを作ると、 三角定規の斜辺の部分はグラフに接したままで、 正面から見た三角定規は底辺は 1 のままであるから、 よってこの三角定規の正面から見た高さが の での グラフの傾きを表すことになる。その位置は横から見れば中心角が の位置で、 横から見た定規の長さは、定規の元の高さの 1 に等しいから、 よってその定規の高さは となる。
これにより の傾きが となる、という説明である。 これなら「ほぼ 」という議論は不要であるし、 の傾きが であることも かなり直感的にわかるのではないかと思う。
竹野茂治@新潟工科大学