6 証明その 3
次は、
の形の不定形である
の
場合の証明を紹介する。
これは、4 節、5 節の証明とは
かなり異なる。
まず普通に思いつくのは、
を
に変換することだろう。
すなわち、
,
とすれば、
で、
となって、
の形になる。
しかし、これで
の結果を利用できるかというと、
必ずしもそうではない。
それは、
に対する (これを と書く) が、
となり、
の定理の仮定である
「 の存在」だけからは、この の存在が
保証できないために
の定理を適用することが
できないからである。
よって、このような置き換えではうまくいかないので、別の方法を考える。
今、
の場合の仮定は、
, は で連続、かつ微分可能で、
|
(5) |
となる。このとき、任意の に対して、
なるすべての に対して
となるような が取れる。
となる任意の , に対して、
コーシーの平均値の定理を適用すると、
ある () が存在して、
|
(6) |
となることは前と同じであるが、
今回は を、 に対して
例えば ( とする) と固定する。
この に対し、(5) を使えば、
であるすべての に対して
|
(7) |
となるような が取れる。
さらに、必要ならばより小さくすることで、 で
あると仮定してよい。
のとき、, は、
(7) によりそれぞれ , に
比べて絶対値は大きいので、
の値はほぼ に近い値となる。
これは、以下のように変形すればよりよくわかる:
この後ろの分数の分子、分母にある分数は、
(7) によりその絶対値は少なくとも 1/2 より小さい。
(6) にこの後ろの分数の逆数をかけると、
|
(8) |
となるが、(7) より、
となるので、(8) より
|
(9) |
となる。一方、(7) より、
となるので、
結局 (9), (10) より、
となることになる。 は の任意の値、 は
任意の値であったので、これは を意味する。
これで、
の場合のロピタルの定理が証明できた。
上の証明からわかる通り、これは
,
,
の場合でも全くこのまま通用するし、
また は に簡単に置き換えることができ、
さらに , に関する証明に変えることも、
4 節の証明を 5 節で書き換えた
方法を用いれば可能になる。
これで、 の場合の、 の 以外の 4 通りの場合で、
以外の 4 通り、すなわち合計 16 通りの証明が終わる。
竹野茂治@新潟工科大学
2015年7月20日