6 4 回微分して元に戻るもの

3 回微分して元に戻るものを求めるのは少し難しいが、 4 回微分して元に戻るものは、
y = C1ex + C2e-x + C3cos x + C4sin x (10)
となる。 なお、この式の最初の 2 つの ex , e-x は、 それぞれ 1 回、2 回微分して元に戻るものになっている。 この (10) を示すことは、 実質的に 4 階の微分方程式
y(4) = y (11)
を解くことになるわけであるが、 しかし (10) を示すためには、まず
y'' = - y (12)
となる y
y = C1cos x + C2sin x (13)
となることを示すことが必要となる ((10) の後半部分) ので、まずこれを考える。 これは、5 節のように結果から定数を消す方法で考える。

y がもし (13) であるとすると、

$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$ = C1 + C2tan x

であるので、これを微分すれば、

$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$ = C2(tan x)' = $\displaystyle {\frac{{C_2}}{{\cos^2 x}}}$

となって C1 が消え、この式を両辺 cos2x 倍して微分すれば、
$\displaystyle \left\{\vphantom{\left(\frac{y}{\cos x}\right)'\cos^2 x}\right.$$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$cos2x$\displaystyle \left.\vphantom{\left(\frac{y}{\cos x}\right)'\cos^2 x}\right\}{^\prime}$ = 0 (14)
となって C2 も消えることになる。

よって、まずは逆に (12) から (14) を導く。

$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$ = $\displaystyle {\frac{{y'\cos x-y(\cos x)'}}{{(\cos x)^2}}}$ = $\displaystyle {\frac{{y'\cos x+y\sin x}}{{\cos^2 x}}}$

となるので、これを cos2x 倍すれば

$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$cos2x = y'cos x + y sin x

となる。この両辺を微分すると、
$\displaystyle \left\{\vphantom{\left(\frac{y}{\cos x}\right)'\cos^2 x}\right.$$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$cos2x$\displaystyle \left.\vphantom{\left(\frac{y}{\cos x}\right)'\cos^2 x}\right\}{^\prime}$
  = (y'cos x + y sin x)' = y''cos x + y'(cos x)' + y'sin x + y(sin x)'  
  = y''cos x - y'sin x + y'sin x + y cos x = (y'' + y)cos x  

となるので、y が (12) を満たしていれば確かに (14) が成り立つことになる。 そして (14) ならば

$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$cos2x = C1

となるから、両辺 cos2x で割って、

$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x}}\right){^\prime}$ = $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{\cos^2 x}}}$

であるが、右辺は C1tan x の微分であるので、 左辺から右辺を引き算すれば、

$\displaystyle \left(\vphantom{\frac{y}{\cos x} - C_1\tan x}\right.$$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$ - C1tan x$\displaystyle \left.\vphantom{\frac{y}{\cos x} - C_1\tan x}\right){^\prime}$ = 0

となるので、

$\displaystyle {\frac{{y}}{{\cos x}}}$ - C1tan x = C2

となる。よってこの両辺を cos x 倍すれば、

y = C1tan x cos x + C2cos x = C1sin x + C2cos x

となって確かに (13) が得られることになる。

そして、これを使えば、 4 回微分して元に戻るもの (11) の場合も容易に求めることができる。 まず、(11) の両辺に y'' を足せば、

y(4) + y'' = y'' + y

であり、左辺は (y'' + y)'' に等しいので、 これは (y'' + y) が 2 回微分すると元に戻ることを意味し、 よって 4 節の結果により、
y'' + y = C1ex + C2e-x (15)
であることがわかる。

一方、(11) の両辺から y'' を引けば、

y(4) - y'' = - y'' + y = - (y'' - y)

となるので、 これは、(y'' - y) が (12) を満たすことを意味し、 よって (13) より、
y'' - y = C3cos x + C4sin x (16)
となる。 この (15) から (16) を引いて 2 で割れば、 結局

y = $\displaystyle {\frac{{C_1}}{{2}}}$ex + $\displaystyle {\frac{{C_2}}{{2}}}$e-x - $\displaystyle {\frac{{C_3}}{{2}}}$cos x - $\displaystyle {\frac{{C_4}}{{2}}}$sin x

となって (10) が得られることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2008年7月6日