3 微分可能性

次は微分可能性について考えてみる。


定義 2

$x=a$ の近く ($x=a$ も含む) で定義されている関数 $f(x)$ に対して、 それが $x=a$微分可能であるとは、極限

\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}
\end{displaymath} (5)

が存在することを言う (その場合にこの極限を $f'(a)$ と書く)。


極限 (5) の存在は、 もちろん左右の極限が存在し、かつ一致することなので、

\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow a+0}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}
=\lim_{x\rightarrow a-0}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}\end{displaymath} (6)

と書くこともできる。なお、例えばこの右極限は、
\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow a+0}f'(x)
\end{displaymath}

とは別物であることに注意する (これについては、 4 節でも再び説明する)。

微分可能性もこのように各点で定義される性質であるが、 開区間 $I=(a,b)$ 上のすべての点で微分可能であれば、 その関数は $I$ 上で微分可能である、とも言う。

微分可能性と連続性については、良く知られているように 次のような上位関係がある。


定理 3

$x=a$ の近くで定義されている関数 $f(x)$$x=a$ で微分可能であれば、$x=a$ で連続である。


証明

(5) の極限が有限な値として存在するので、 それを $A$ とすれば、

\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow a}\{f(x)-f(a)\}
=
\lim_{x\rightarrow a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}  (x-a)
= A\times 0
= 0
\end{displaymath}

となるので、(1) が言える。


よって微分可能性の方が連続性よりも強いことがわかるが、その逆は言えない。

図 4: $\vert x\vert$ のグラフ
\includegraphics[height=0.2\textheight]{abs1.eps}
例えば $y=\vert x\vert$$x=0$ を含みすべての点で連続であるが、 $x=0$ では
\begin{displaymath}
\lim_{x\rightarrow +0}\frac{\vert x\vert-0}{x-0}=1,\hspace{1zw}
\lim_{x\rightarrow -0}\frac{\vert x\vert-0}{x-0}=-1
\end{displaymath}

となり (6) の両辺の値が異るので、 $x=0$ では微分可能ではないことがわかる。 このように、連続であってもとがっているような点では微分可能ではなくなる。

通常連続な関数は微分可能ではないような点はそれほど多くはないが、 中にはすべての点で連続であるが、すべての点で微分可能ではない関数も存在する。 例えば以下のワイヤストラスの関数 $f_w(x)$ と呼ばれるものがその一つである (詳しくは、例えば [2], [4] 参照)。

\begin{displaymath}
f_w(x)=\sum_{n=1}^\infty a^n\cos(2\pi m^n x)
\hspace{1zw}(\mbox{$0<a<1$, $m$ は整数で $m\geq 2$})\end{displaymath} (7)

この関数の連続性、微分可能性の証明はここではできないが、 グラフはつながっているのに、 いたるところとがっているような関数となっている。

竹野茂治@新潟工科大学
2008年8月26日