ここには、基礎数理 I に関する講義資料、補遺、余談などを置いておきます。 なお、講義に関する主たる情報は、大学の Moodle のページを参照してください。
「数学についての雑多な書き物のページ」
から、初等的な微分積分に関係する話をこちらに移動しました。
(2024-04-30)
昨年 (昨年度は基礎数理 II)、今年と、1 変数の微分の最後に出て来る テイラー展開の説明を、教科書とはやや異なる形で行って来ました。
教科書では、剰余項を含んだ形を証明するため、コーシーの平均値を 使ったり、部分積分を使ったりしているものが多いと思いますが、 工学では、それよりもむしろ各項の形が何故あのような形であるのか、 ということを知る、ということを目標としました。 しかし、必ずしもうまくいってはいないように思います。 もっと良い方法を探るべきだと思いますが、取り敢えず今までの説明を ここでまとめておきます。
PDF ファイルと、HTML 版にそれへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
例年テイラー展開は定義と、その定義に基づく計算位しかできず、 その収束性の話や、積、商、合成関数のテイラー展開などについては 時間がないためほとんど話をしていませんし、 教科書にも余り書いてないことが多いです (多少は書いてある教科書を使ったこともありますが)。
よって定義通りに計算しようとすると、特に積、商、合成関数の テイラー展開の場合は計算が割と大変になります。 そのテイラー展開のやり方をある具体的な関数を例に取って 紹介したものをここにまとめておきます。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
複雑な関数のテイラー展開をある大学院生に質問されました。 定義通りに計算しようとすると微分の計算が大変なものなのですが、 実は一般二項定理を知っていれば微分の計算なしに テイラー展開できる例にもなっていますので、 その計算をここにまとめておきます。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
例年三角関数の導関数がなぜそうなるかという説明は省いていますが、 それを、教科書などで行う説明よりやや図形的な説明を考えてみました。 ただ、まだ必ずしも分かりやすいものでもないと思いますが、 取り敢えずここにまとめておきます。
PostScript ファイルを修正し、PDF ファイルを追加しました。
(07/12 2003)
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
先頭部分にミスがあったのを修正しました
(粕谷直彦さん、ご指摘どうもありがとうございました)。
(04/16 2012)
ついでに、tan x の微分の図形による考察や
sin x, cos x の定積分の図形による考察の追加、
図の修正、本文の修正など、大幅な加筆修正を行いました。
(07/02 2014)
現在は電卓があるので意味がなくなりましたが、 元々対数は、計算機のなかった時代に 積や商、累乗が簡単に計算 (=対数計算) できるようにと発明 (発見 ?) されたもので、 分厚い 10 桁の対数表が計算機の代わりに使われたそうです。 電卓の前に使われていた計算尺も、それを物差しにしたような道具です。
計算する桁にもよりますが、 積や商は筆算で計算するにしても和や差に比べてはるかに時間がかかり、 その積や商を和や差で計算することを可能にした対数表は、 「天文学者の寿命を 10 年伸ばした」と絶賛された大発明だったのです。 当時 (15~17 世紀頃)、航海の安全のためには、高度で精密な天文観測技術と 天体の運行に関する精密なデータが必要でした。
対数表が発明される少し前に 三角関数表を使って積を計算する方法が発見されていたのですが、 どのようにするかわかりますか ?
使うのは余弦の加法定理 cos(x+y)=cos(x)cos(y)-sin(x)sin(y) から導かれる 積和の公式:
2sin(x)sin(y)=cos(x-y)-cos(x+y)=sin(90-x+y)-sin(90-x-y)です (単位は度)。
2AB = 2sin(x)sin(y) = sin(90-x+y)-sin(90-x-y)により差と 2 での割算で積 AB が求まる
ただし、この方法は割算や累乗に応用が難しいという難点があり、 この発見に刺激を受けた ネィピア (J.Napier 1550-1617 英) は 7 桁の対数表 (常用対数ではない特殊な対数) を発明し、後に ブリックス (H.Briggs 1561-1630 英) とともに 12 桁の常用対数表を完成させました。
対数表を使えば、対数法則により積、商などが和、差で、 累乗が積で計算できることなどがすぐに分かると思います。 しかも上の三角関数表を使う方法より楽でずっと直接的です。
この対数の発明者であるネィピアにちなんで、自然対数の底である e は ネィピア数とも呼ばれています。 また、対数は英語で logarithm といいますが、 これはネィピアがギリシャ語の「logos」(比)と「arithmos」(数)を合わせて作った 造語なんだそうです。
参考文献:
やや基礎数理 I の話とはずれるかもしれませんが、 先日ある学生に聞いた、三角関数の加法定理の覚え方について 少し考えてみました。 取り敢えずここにまとめておきます。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
ところで、上の文書では関数方程式の話を余談として書きましたが、 それとはちょっと別の話になりますが、 直接加法定理に関係する余談を少し追加します。
sin(x+y) と cos(x+y) の加法定理の形についてどんな風に感じるでしょうか。 なんとなく sin(x+y) の方が、マイナスもないし 割りと対称性があってきれいな式のように見えないでしょうか。 または、なんとなく sin(x+y) と cos(x+y) の加法定理ってかなり違う形に 感じないでしょうか。
では、そこから sin(x+y+z) や cos(x+y+z) の加法定理はどんな形になるか
想像できるでしょうか。
実は sin(x+y+z) にはマイナスが出て来ますし、
cos(x+y+z) とある意味で非常に似たような式になります。
興味ある人は、自分で計算してみるといいでしょう。
ついでに sin(x+y+z+w)、cos(x+y+z+w) もやってみると、
何かの規則に気がつくかも知れません。
(03/05 2003)
上の文書の 「5.2 関数方程式」 で、
f(x+y)=f(x)cos(y) + f(y)cos(x)がすべての実数 x,y に対して成り立つような f(x) を求める、という話を書き、 そこに、「f(x) は微分可能である、といった条件がつけば」そのような f は
f(x)=(定数)×sin(x)になる、と書きましたが、考えてみると微分可能のような条件は 別に必要ないようです。
上の加法定理の証明 2 (の後半の sin の加法定理) では やや面倒な説明をしていますが、 以下にもっと易しい説明がありました:
私の 3 ページの図 2 で言えば、 △ABC = △ABD + △ACD より (高さ = 1 は忘れてよい)、
(1/2)AB・AC・sin(x+y) = (1/2)BD・AD + (1/2)CD・ADとなるので、両辺 (1/2)AB・AC で割り算すれば、
sin(x+y) = (BD・AD)/(AB・AC) + (CD・AD)/(AB・AC)とこれで OK です。 こちらの方がえらく楽ですし、ずっとわかりやすいですね。
= (BD/AB)・(AD/AC) + (AD/AB)・(CD/AC)
= sin x・cos y + cos x・sin y
私のは「両辺 (1/2)AB・AC で割」らずに、
tan を使って書いたりした上で
両辺 cos 倍とか言っているので、
むしろわかりにくいです。
(09/12 2011)
工学部の講義ではだいたいどこでもそうだと思いますが、 うちの講義でも「極限」の定義の厳密な話はしていませんし、 教科書にも書いてありません (高校でもやりません)。 そういう話に興味のある人向けに、 極限の厳密な定義、いわゆる「ε-δ論法」のお話を少し書いてみました。 取り敢えずここにまとめておきます。
たまに、理学部数学科の数学と工学部の数学はどう違うのか、 と聞かれることがあります。それに対する一つの回答にもなっていると思います。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
講義では ∞-∞ の形の不定形である、 \(\sqrt{n+1}-\sqrt{n}\) の極限が 0 になることを、 有理化のような計算によって求めました。 一方で、 \((n+1)^1-n^1=1\) です。 では、一般の \((n+1)^p-n^p\) (\(p\gt 0\)) の極限は どうなるのでしょうか。 少し考えてみましたので、それをここにまとめておきます (多少、微分の知識が必要になります)。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
海岸道路を柏崎市から新潟市へ走ると徐々に佐渡島が大きく見えてきます。 佐渡島は海の上に浮いて見えますが、 地球は丸いので佐渡島の海岸が見えるわけではなく、 佐渡島が水平線の上に顔を出している部分が見えているわけです。
では、佐渡島の海岸を見ようと思ったら 新潟の海岸からどれ位の高さから見れば見えるのか、 ふと気になったので簡単に計算してみました。
その計算には三角関数やテイラー展開などを利用しましたので、 それらの応用例の一つとしてここに紹介したいと思います。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
追記 (01/11 2007):
上記文章中では
「シーサイドラインは、最も高いところでも 70 m はないような気がするので、 シーサイドラインからは佐渡の海岸は見えないように思う」と書きましたが、先日越後七浦シーサイドラインを走ったら、 海岸のようなものが見える高い場所がありました。 場所は浦浜付近の、五ヶ浜トンネルや五福トンネルから浦浜大橋に向う辺りで、 ここはかなり高くなっていて (70m あるかどうかは知りません)、 天気のいい日ならば建物もよく見えます。
追記 (10/25 2007):
さらに追加ですが、
地図を見ると確かに五ヶ浜トンネル付近は 80m 位ありそうです。
ついでに写真を取ってきましたので、それをここにつけておきます
(私の腕のせいでかなりボケていて見にくいです)。
見にくいでしょうが、 海岸近く (低い位置) から取った佐渡島の「水平線」の写真は、 海の色と佐渡島の色とがはっきり分かれて見えます。 また、その海と佐渡との境い目にごく小さい凸凹が見られますが、 これは波頭です。 よって佐渡島の海岸は海の下になっていることがわかります。
一方、高いところから取った佐渡島の写真は、 海と佐渡との境い目が白っぽく写っています。 白い凸凹も多少見えますが、 これは海岸や建物が見えているものと思われます。
追記 (08/18 2008):
上記のレポートでは、L を弧 AB の長さとして計算しているので、
cosθのテイラー展開が必要となるのですが、
θが 0 に十分近いので、弧 AB はほぼ AC に等しいと考えれば、
三平方の定理だけで近似式が作れるようです (記号は上のレポートを参照)。
\(L^2 \doteqdot AC^2 = OC^2-OA^2 = (R+2)^2 - R^2 = 2hR+h^2 \doteqdot 2hR\)となるので、よって、
\(\displaystyle h \doteqdot \frac{L^2}{2R} = \frac{\pi L^2}{40000} [km] = \frac{\pi L^2}{40} [m]\)となり、レポートと同じ式が得られます。
確かにこちらの方が簡単ですが、 上のレポートが意味がないわけではないと思います。 もし、弧 AB ≒ AC に気がつかずにあくまで弧 AB を考えた場合には レポートと同じように cosθがでてきますから、 その場合はテイラー展開を知らなければ近似式を作ることはできません。 テイラー展開を知っていれば、 エレガントな方法をひねりださなくても 力技で近似式を作ることができる、という風に見えなくもないですが、 物理や工学などではまさにそのような目的で数学が道具として使われます。
目次に戻る講義の指数関数 \(e^x\) の微分のところで、
「微分しても変わらないのは、\(e^x\) とその定数倍しかない」と話しましたが、それは実際どのようにして示されるのか、 などについてまとめてみたので、ここに紹介します。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
先日、知り合いから、 場合分けされた関数の連続性と微分可能性に関する質問を受けました。 それに関して、一つの定理といくつかの例を思い出したのですが、 これらは連続性と微分可能性に対する 正しい理解を深めるものとなるかもしれませんので、 ここにまとめておきます。
HTML 版に PDF ファイルへのリンクを追加しました。
(01/12 2009)
大学の 1 年生の微積分等で出てくる「ロピタルの定理」は有名ですが、 多くのバリエーションがある定理としても知られています。
大学の教科書では、その証明は、 最も典型的なもの、証明の易しいものだけ紹介し、 「後は同様」としていることが多いようです。
しかし、少し考えてみると、 中には必ずしも「後は同様」では済まないものもあるようなので、 せっかくなので、その多くのバリエーションのいくつかの証明を 以下にまとめておきます。
目次に戻る
sin x, cos x の導関数を求めるときに使われる極限
\(\displaystyle \lim_{x\rightarrow 0}\frac{\sin x}{x} = 1\)には、循環論法が起こりうることが指摘されています。 それは、この証明に扇形の面積を使うものがあるのですが、 それだと循環論法になってしまう、 つまりその証明で使われる命題をたどると 結局この結果を使っていることになる、という主張です。
その循環論法を避けるために、 扇形の弧の長さを用いて証明をしている場合もありますが、 それはそれで問題がないわけでもありません。 それらに関して、少し考えたこともありますので、ここにまとめておきます。
通常、微積分の教科書では、 微分の公式は極限による微分の定義によって証明していますが、 一般的に学生の極限の理解は良いとは言えず、 それを用いる公式の証明の紹介は、 全く意味がないと思いませんが、やや意味が薄いように感じています。
そのため以前から、 極限を極力用いない形での微分の公式の証明を考えていたのですが、 初等関数である巾乗関数 (\(x^\alpha\))、 三角関数 (sin x, cos x)、指数関数 (\(a^x\))、 対数関数 (\(\log_a x\)) の導関数の公式に対する その試みをここにまとめておきます。
三角関数の微分の説明の最後に、
三角定規を貼る形での説明を追加しました。
(04/11 2017)
以前、高校の数学教員から、高校の数学では指数を拡張して 指数関数 \(a^x\) を考えるが、 \(x\) が有理数まではちゃんと定義するものの実数への拡張は適当に流している、 もう少しちゃんと定義できないか、という質問を受けたことがあります。
確かに、通常高校の教科書では無理数乗は「有理数乗の極限」 としてさらっとだけ触れているのですが、 それでちゃんと定義できるかを考えると、実はそれなりの準備が必要となります (そういう方向での証明をちゃんと説明している本として、 例えば田島一郎「解析入門」(岩波全書 325) があります)。
一方、\(e\) の定義にあるような極限を使って、自然数乗と極限だけを用いて、 任意の実数に対する「\(e^x\)」を与える式があり、 それを使って「\(e^x\)」を定義することも可能です。 その逆関数として自然対数を定義すれば、 一般の正の実数を底とする \(a^x\) を定義することも可能です。 そのような方向で定義した場合の指数関数の性質の証明、 および多少の発展 (複素数乗) などを考えてみましたので、 ここにまとめておきます。
昔、テイラー展開の計算について、 教科書には載っていない話をいくつか書きました (「テイラー展開について」 「テイラー展開について (その 2)」 「テイラー展開について (その 3)」)。 それ以外にも、別に書いた記事の中にテイラー展開の計算を 書いたものもいくつかあります。
それに関して、ネット上で、 「双曲線関数について」 を引いて、 \(\displaystyle \frac{x}{1-e^{-x}}\) のマクローリン展開を同様にできないか、 という質問があがっているのを最近見つけました (Yahoo 知恵袋)。
それに対して、質問者の方法は間違い、という回答がついていて、 「展開できる」という話も書かれてはいるようでしたが、 その方法についてはなかったようなので、 せっかくなのでここに少しまとめておきます。
なお、「テイラー展開について」としては「その 4」ですが、 「積、商、合成関数等のテイラー展開について」としては「その 3」なので、 やや html, pdf とはタイトルがずれています。
最もよく使う三角関数はサイン、コサイン、タンジェントの 3 つ、 その他にもよく使うものとして、セカント、コセカント、コタンジェントの 3 つがあります。これらの名前は表にすると以下のような感じになります。
なお、「意味」は、直角とθを底辺に置いた直角三角形での話です。
名前 | 式の表記 | fullname | 漢字名 | 意味 |
---|---|---|---|---|
サイン | sinθ | sine | 正弦 | 高さ/斜辺 |
コサイン | cosθ | cosine | 余弦 | 底辺/斜辺 |
タンジェント | tanθ | tangent | 正接 | 高さ/底辺(sinθ/cosθ) |
コタンジェント | cotθ | cotangent | 余接 | 底辺/高さ(1/tanθ) |
セカント | secθ | secant | 正割 | 斜辺/底辺(1/cosθ) |
コセカント | cosecθ | cosecant | 余割 | 斜辺/高さ(1/sinθ) |
これを見るといくつかのことがわかります。
また、「数の大航海」(志賀浩二、日本評論社) §2.4 によれば、 元々サイン (sine) という名前は勘違いによる誤訳から来ているそうで、 中心角に対する弦の長さを意味する chord(θ) の半分 (= 現在の sinθ) という意味の言葉を訳すときに間違えられて、 最終的に sine という名前になったんだそうです。
なお、sinθ, cosθ, tanθ の表記は国際的にも通用しますが、 世界中すべての国でこの表記が用いられているわけではありません。 特に旧東欧圏と呼ばれる諸国では、tanθ は 2 文字表記の tgθ が使われることも多いようです。 その場合、コタンジェントは ctgθ と書かれるようです。
また、漢字名の三角関数の方は、
他にも「正矢」(せいし)、「余矢」(よし)
と呼ばれるものがありました。これは現在で言うと
1-cosθ, 1-sinθ に相当し、
測量で使われたもののようです。
versθ, coversθ などの名前を与える場合もあるようです。
(10/12 2022)
講義では、教科書にある 2 乗、3 乗の展開の公式のほかに、 教科書には載っていない一般の n 乗の展開公式である二項定理を紹介しましたが、 その証明を以下にまとめておきます。 またついでに、教科書に載っている、 2 乗の差、3 乗の和、差の因数分解の公式の一般化についても追加しておきます。
講義で使用している教科書の表紙にも書いてありますが、 実はy = sin x, y = cos x の、x,y のスケールが等しいグラフ、 すなわち 1 周期分が横幅が 2π = 6.28...、縦幅が 2 であるグラフは、 透明なフィルムを使って簡単に見ることができます。
一辺の長さが 2π である正方形のフィルムをまず用意します。 2π でなくても、単位を適当に取りかえてそうであると思えばいいです。 以前は授業で、クリアファイルから正方形を切り出したものを配布していました。 一つのクリアファイルから、1 辺 15cm 位のものが 4 つ取れます。
その一つの対角線を黒く書きます。ペンがなければ、対角線で折り曲げて、 折り跡をつけて、それをまた元の形に広げてもいいです。
そしてそれを円筒の形に丸めて、横にしてみると、 その円筒の円が一周 2π、すなわち半径 1 の円なので縦幅が 2 になり、 円筒の長さ、すなわち横幅は 2π で、 円筒の合わせ目を正面に持ってくると、 さきほどの対角線を正面から見たものが y = sin x のグラフになります。 円筒の合わせ目を上にやると、正面から見たものは y = cos x のグラフになります。
それが正しく y = sin x や y = cos x のグラフになることの説明については、 以下の GIF アニメーションを見てください (画像をクリックするとアニメーションが始まります)。
高校で、指数 (累乗) は、自然数から 0 乗、負の整数乗、1/n 乗、 有理数乗へと拡張されます。講義でもその復習を行いましたが、 教科書に書いてないこと、および教科書には証明が載ってないことを いくつか紹介しました。それは、以下のものです。
1. の左辺は \(a^{-n}\) の定義、 2. の左辺は \(a^{-1/n}\) の定義、 3. の左辺は \(a^{-m/n}\) の定義として教科書に書いてあるもので、 それらがそれぞれその右辺にも一致することを講義では紹介しましたが、 それは教科書には書いてありません。 また、4. は両辺とも \(a^{m/n}\) の定義として教科書に載っていますが、 その両辺が等しいことの証明は書かれていません。 そこで、これらの証明をここでまとめて紹介します。
まず 1. は、自然数乗に対して成り立つ指数法則を用いれば、
\(\displaystyle \left(\frac{1}{a}\right)^n = \frac{1^n}{a^n} =\frac{1}{a^n}\)となり成立します。
次に 2. は、
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt[n]{a}} = \sqrt[n]{\frac{1}{a}}\)を意味しますが、この左辺を \(x\) とすると、
\(\displaystyle x^n = \left(\frac{1}{\sqrt[n]{a}}\right)^n = \frac{1^n}{\left(\sqrt[n]{a}\right)^n} = \frac{1}{a}\)となるので、
\(\displaystyle x = \sqrt[n]{\frac{1}{a}}\)が言えたことになります。
3. は、
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt[n]{a^m}} = \sqrt[n]{\left(\frac{1}{a}\right)^m}\)を意味しますが、この左辺を \(x\) とすると、
\(\displaystyle x^n = \left(\frac{1}{\sqrt[n]{a^m}}\right)^n = \frac{1^n}{\left(\sqrt[n]{a^m}\right)^n} = \frac{1}{a^m} = \frac{1^m}{a^m} = \left(\frac{1}{a}\right)^m\)となるので、
\(\displaystyle x = \sqrt[n]{\left(\frac{1}{a}\right)^m}\)が言えたことになります。
4. は、左辺を \(x\) とすると、
\(\displaystyle x^n = \{\left(\sqrt[n]{a}\right)^m\}^n = \{\left(\sqrt[n]{a}\right)^n\}^m = a^m\)となるので、
\(\displaystyle x = \sqrt[n]{a^m}\)が言えたことになります。
自然数乗は、高校で 0 乗、負の整数乗、有理数乗と拡張され、 そして形式的には実数乗まで拡張されます。
講義でも、その話の復習と、それに伴なって指数法則も有理数乗 (実際には実数乗) に対しても成立する、という話を紹介していますが、 教科書、あるいは解析学のほとんどの本にもその証明は書かれていないので、 本稿ではその証明をここにまとめておきます。