3 その他のηの場合

次に、$\phi _0(u)$ 以外の $\eta $ を考える。 まずは $\eta=\phi_1(u)=4u(1-u)$ から。

実は、$\phi _0(u)$$\phi _1(u)$ とは、 これも [3] でも紹介されているが、関数

  $\displaystyle
\xi_1(u)
= \frac{1-\cos\pi u}{2}
= \sin^2\frac{\pi}{2}\,u$ (12)
を通じてつながることが知られている。
図 2: $\xi _1(u)$$\phi _2(u)$
\begin{figure}\begin{center}\setlength{\unitlength}{0.12mm} \scriptsize\begin{...
...(590,-420){$1/3$}
\put(670,-420){$2/3$}
\end{picture}
\end{center}\end{figure}

この $\xi _1(u)$$[0,1]$ で連続かつ単調増加で、$\xi_1(0)=0$, $\xi_1(1/2)=1/2$, $\xi_1(1)=1$ を満たす。 $0\leq u\leq 1/2$ では、

$\displaystyle \xi_1(2u)
= \sin^2 \pi u
= 4\sin^2\frac{\pi}{2}\,u\cos^2\frac{\pi}{2}\,u
= 4\xi_1(u)(1-\xi_1(u))
= \phi_1(\xi_1(u))
$
となり、また $1/2\leq u\leq 1$ では、
$\displaystyle \xi_1(2(1-u))
= \sin^2\pi(1-u)
= \sin^2\pi u
= 4\xi_1(u)(1-\xi_1(u))
= \phi_1(\xi_1(u))
$
となって、よって
$\displaystyle \xi_1(\phi_0(u)) = \phi_1(\xi_1(u))\hspace{1zw}(0\leq u\leq 1)
$
が成り立つ。ここから、 $\phi_1(u) = (\xi_1\circ\phi_0\circ\xi_1^{-1})(u)$ となり、 そして
$\displaystyle \phi_1^n(u) = (\xi_1\circ\phi_0^n\circ\xi_1^{-1})(u)
$
も言える。

よって、$k\geq 1$ に対して、

$\displaystyle G(\phi_1^k(u)) = G(u)\hspace{1zw}(0\leq u\leq 1)
$
が満たされる場合、 $\hat{G}(u) = (G\circ\xi_1)(u)$ とすれば、 $\hat{G}(u)$ は連続で、
$\displaystyle G(\phi_1^k(u))
= G((\xi_1\circ\phi_0^k\circ\xi_1^{-1})(u))
= \hat{G}((\phi_0^k\circ\xi_1^{-1})(u)),\hspace{1zw}G(u) = \hat{G}(\xi_1^{-1}(u))
$
より
$\displaystyle \hat{G}(\phi_0^k(u)) = \hat{G}(u)\hspace{1zw}(0\leq u\leq 1)
$
が成り立つので、2 節により $\hat{G}(u)$ は定数となり、 よって $G(u)$ も定数となる。 つまり、$\eta $$\phi_1$ の場合でも (1) が 成り立てば $G$ は定数となることがわかる。

同様のことは、 $\xi:[0,1]\rightarrow[0,1]$ が 全単射で連続 (よって単調) の場合、

  $\displaystyle
\psi(u) = (\xi\circ\phi_0\circ\xi^{-1})(u)$ (13)
となる $\psi(u)$ に対しても言え、すなわち $G$ を定数にする。

例えば、 $\xi_2(u)=1-(1-u)^2$$[0,1]$ から $[0,1]$ の 全単射な連続関数で、

$\displaystyle \xi_2^{-1}(u)=1-\sqrt{1-u}\hspace{1zw}(0\leq u\leq 1)
$
なので、
$\displaystyle (\phi_0\circ\xi_2^{-1})(u) =
\left\{\begin{array}{ll}
2-2\sqrt{...
...\displaystyle \left(1-\,\frac{1}{\sqrt{2}}\leq u\leq 1\right)\end{array}\right.$
より、
$\displaystyle (\xi_2\circ\phi_0\circ\xi_2^{-1})(u)
= 1-(2\sqrt{1-u}-1)^2
= 4\sqrt{1-u}-4(1-u)
$
となる。 なお、これは $u=1-1/\sqrt{2}$ での特異性も消えているが、 それは $\xi_2'(1-0)=0$ による。

(13) により $G(u)$ を定数にする $\eta $ の バリエーションが増えるが、次はそれには含まれない、 次のような関数を考えてみる。

  $\displaystyle
\phi_2(u) = \left\{\begin{array}{ll}
3u & \displaystyle \left(0...
...3(1-u) & \displaystyle \left(\frac{2}{3}\leq u\leq 1\right)
\end{array}\right.$ (14)

$u\in[0,1]$ を 3 進展開して、

  $\displaystyle
u
= \frac{a_1}{3}+\frac{a_2}{3^2}+\frac{a_3}{3^3}+\cdots
= (a_1,a_2,a_3,\ldots)_3
\hspace{1zw}(a_j=0,1,2)$ (15)
と書き、 $\overline{a_j}=2-a_j$ とする。あるところから先が 0 の場合は、 2 進の場合同様
$\displaystyle \frac{a_1}{3}+\frac{a_2}{3^2}+\cdots+\frac{a_k}{3^k}
=(a_1,a_2,\ldots,a_k)_3
$
と書く。

(15) で $a_1=0$ の場合は $u\leq 1/3$ より

$\displaystyle \phi_2(u) = 3u = 3(0,a_2,a_3,a_4,\ldots)_3
= (a_2,a_3,a_4,\ldots)_3
$
のシフトになり、$a_1=1$ の場合は $1/3\leq u\leq 2/3$ より
$\displaystyle \phi_2(u) = 1\hspace{1zw}(\phi_2^2(u)=0)
$
となる。$a_1=2$ の場合は $u\geq 2/3$ より
\begin{eqnarray*}\phi_2(u)
&=&
3(1-u)
= 3((2,2,2,\ldots)_3-(2,a_2,a_3,\ldot...
...
\\ &=&
(\overline{a_2},\overline{a_3},\overline{a_4},\ldots)_3\end{eqnarray*}
の反転とシフトをしたものになる。

よって $a_j=1$ が途中に含まれると、少なくとも $k\geq j+1$ に対して

  $\displaystyle
\phi_2^k(u)=0$ (16)
となる。そのような $u$ は、$n\geq 1$, $0\leq m<3^{n-1}$ の 整数 $n,m$ に対し
$\displaystyle \frac{3m+1}{3^n}\leq u\leq \frac{3m+2}{3^n}
$
となるものがすべて該当する。 なお $u=(3m+2)/3^n$ の場合は、 $a_n=2$, $a_{n+j}=0$ ($j\geq 1$) だが、 それは $a_n=1$, $a_{n+j}=2$ と書くこともできるので 上に含まれることになる。

その $u$ の集合を、

  $\displaystyle
\left\{\begin{array}{lll}
U_0
&=
&\displaystyle \bigcup_{n=1...
...2}{81}\right]
\cdots
\\ [1zh]
U_1
&=
& U_0\cup\{0,1\}
\end{array}\right.$ (17)
とする。これは、いわゆるカントール 3 進集合の 補集合 (cf.[4]) に近いものになっていて、 $U_0$, $U_1$ の幅は、
$\displaystyle \frac{1}{3}+\frac{2}{3^2}+\frac{2^2}{3^3}+\cdots = 1
$
となるので $U_1$ の補集合 $U_1^c$ はいわゆる 0 集合となる。

$U_1^c$ の元は、0, 2 のみの $a_j$ からなる 3 進表示を持つが、 $a_j$ が 0, 2 のみで、あるところから先の $a_j$ がすべて 0、 またはあるところから先の $a_j$ がすべて 2 の $u$ は、 $u=(3m+1)/3^n,(3m+2)/3^n$ の形か、または 0, 1 のいずれか となり、それらはすべて $U_1$ に含まれるので、 よって $U_1^c$$a_j$ が 0 または 2 で、あるところから先が全部 0、 およびあるところから先が全部 2 になるものを除いたもの、となる。 すなわち、有限の 3 進展開になる $u=(a_1,a_2,\ldots,a_k)_3$ は すべて $U_1$ に含まれる。

そしてこの場合、$U_1^c\ni u$ ならば $\phi_2(u)\in U_1^c$ であり、 一方 $U_1\ni u$ ならば $a_j$ に 1 が含まれるか、 または有限の 3 進展開表示を持つか 0, 1 のいずれかなので、 そのいずれの場合もある $k$ に対し $\phi_2^k(u)=0$ となる。

次に、$u_2\in U_1^c$ で、 $\{\phi_2^n(u_2)\}_n$$U_1^c$ で稠密となる ような $u_2$ が取れることを示す。 それには、$\phi_0$$u_0$ の場合のように、

$\displaystyle \left.(0)_3,(2)_3\right\vert
\left.(0,0)_3,(0,2)_3,(2,0)_3,(2,2)_3\right\vert
(0,0,0)_3,(0,0,2)_3,\ldots
$
を順に並べ、これらが先頭の桁に順に出るように $u_2$ を作る。 反転を調整するように 0 や 2 を適宜挟んで作ればよい。例えば、
$\displaystyle u_2 = (0,\underline{0},\underline{2},2,
\ \vert\ \underline{0,0},...
...0},2,\underline{2,2},
\ \vert\ \underline{0,0,0},\underline{0,0,2},2,\ldots)_3
$
のようにすれば、この $u_2$ に対して $\{\phi_2^n(u_2)\}_n$$U_1^c$ で稠密となる。また、さらに任意の自然数 $k$ に対して、 上の $u_2$ に適当に 0 を挿入したものを $u_2'$ とすることで、 $\{\phi_2^{kn}(u_2')\}_n$$U_1^c$ で稠密となるようにできることも、 $\phi_0$ の場合と同様である。

この場合、$\phi _2(u)$ と自然数 $k$ に対して、

  $\displaystyle
G(\phi_2^k(u))=G(u)\hspace{1zw}(0\leq u\leq 1)$ (18)
が成り立つ場合、$G$ が定数となるかを考える。$u\in U_1$ の場合は、
$\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty}{\phi_2^{kn}(u)}=0
$
なので、その $u$ に対しては (18) より、
  $\displaystyle
G(u) = G(\phi_2^{kn}(u)) \rightarrow G(0)$ (19)
すなわち $u\in U_1$ に対しては $G(u)=G(0)$ となる。

一方、$u\in U_1^c$ の場合は、 $\{\phi_2^{kn}(u_2')\}_n$$U_1^c$ で稠密なので、 ある増加無限数列 $\{n_j\}_j$ で、

$\displaystyle \lim_{j\rightarrow \infty}{\phi_2^{kn_j}(u_2')} = u
$
となるものが取れる。よって、$G$ の連続性により、
  $\displaystyle
G(u) = \lim_{j\rightarrow \infty}{G(\phi_2^{kn_j}(u_2'))} = G(u_2')$ (20)
が成り立つ。 そして $u_2'$ の 3 進表示の $m$ 桁目より先をすべて 0 としたものを $u_2'(m)$ とすると、 $u_2'(m)\in U_1$ で、かつ
$\displaystyle \lim_{m\rightarrow \infty}{u_2'(m)}=u_2'
$
となるので、(19), (20) より、
$\displaystyle G(u_2')=\lim_{m\rightarrow \infty}{G(u_2'(m))}=G(0)
$
となるので、結局 $G(u)$$[0,1]$ 上定数 $G(0)$ に 等しいことがわかった。

この $\phi _2(u)$ のように $\xi\circ\phi_0\circ\xi^{-1}$ では 表せないようなものでも、$G$ を定数にする性質も持つものがある。 もちろん、この $\phi _2(u)$ に対しても、 全単射で連続な $\xi:[0,1]\rightarrow[0,1]$ に対して $(\xi\circ\phi_2\circ\xi^{-1})(u)$ はすべて $G$ を定数にすることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2024-03-25