3 単純波の相互作用

次に、2 つの単純波の相互作用を考える。 すなわち、初期値
  $\displaystyle
u_0(x) = \left\{\begin{array}{ll}
u_1 & (x<a)\\
u_2 & (a<x<b)\\
u_3 & (b<x)
\end{array}\right. \hspace{1zw}(u_1,u_2,u_3: \mbox{ 定数})$ (12)
に対するエントロピー解を考える。 まず本節では、膨張波同士、衝撃波同士の相互作用を考える。

  1. $u_1<u_2<u_3$ の場合

    この場合は、$x=a,x=b$ から 2 つの膨張波 $R_1=R(u_1,u_2;a)$, $R_2=R(u_2,u_3;b)$ が発生するが、$R_1$ の右端の速度と $R_2$ の左端の速度がどちらも $f'(u_2)$ のため、 両者は平行で $u=u_2$ の部分の幅は変わらずに進んでいく (図 2 左)。

    図 2: 膨張波-膨張波と衝撃波-衝撃波
    \begin{figure}\begin{center}
\setlength{\unitlength}{0.18mm}
\begin{picture}...
...(670,-209){$u_3$}
\put(640,-179){$t_1$}
\end{picture}
\end{center}\end{figure}

  2. $u_1>u_2>u_3$ の場合

    この場合は、$x=a,x=b$ から 2 つの衝撃波 $S(u_1,u_2;0,a)$, $S(u_2,u_3;0,b)$ が発生し、その進行速度は、それぞれ

    $\displaystyle s_1 = \frac{f(u_1)-f(u_2)}{u_1-u_2},
\hspace{1zw}s_2 = \frac{f(u_2)-f(u_3)}{u_2-u_3}
$
    であるが、Lax 条件 (11) から
    $\displaystyle s_1>f'(u_2)>s_2
$
    なので衝撃波の不連続線 $x=a+s_1t$, $x=b+s_2t$ はある場所 $(t_1,x_1)$ で 衝突し、その後 1 つの衝撃波 $S(u_1,u_3;t_1,x_1)$ となって進む (図 2 右)。 すなわちこの場合エントロピー解は、$t<t_1$ では
    $\displaystyle u(t,x) = \left\{\begin{array}{ll}
u_1 & (x<a+s_1t)\\
u_2 & (a+s_1t<x<b+s_2 t)\\
u_3 & (b+s_2 t<x)
\end{array}\right. $
    $t>t_1$ では
    $\displaystyle u(t,x) = \left\{\begin{array}{ll}
u_1 & (x-x_1<s_3 (t-t_1))\\
u_3 & (s_3 (t-t_1)<x-x_1)
\end{array}\right. $
    となる。

竹野茂治@新潟工科大学
2024-02-21