4 一般の錐体の場合の極座標公式

3 節の錐体は、円錐を斜めに切ったものであり、 この場合は展開図は簡単に極座標表示できたが、 斜円錐、すなわち底面が円で、 頂点がその中心の真上にない点である錐体の場合は、 展開図を与える式はそのように簡単にはならない。 それは、$C$ のパラメータ $t$ と 展開図の極座標の中心角 $\theta$ との間に (3) のような簡単な関係式が成り立たないからである。

本節では、まず一般的な錐体に対してその $t$$\theta$ の関係式を求め、 展開図の極座標による表現式を与えることを考える。

まず、$C$ 上の点をパラメータ $t$ を用いて $\mathrm{Q}=\mathrm{Q}(t)$ ( $t_0\leq t\leq t_1$) で表し ( $\mathrm{Q}(t_0)=\mathrm{Q}(t_1)$)、

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$q$}(t)=\overrightarrow{\mathrm{PQ}(t)} = (q_x(t),q_y(t),q_z(t))
\end{displaymath}

とし、その母線の長さを
\begin{displaymath}
\rho(t)=\vert\mbox{\boldmath$q$}(t)\vert=\vert\overrightarrow{\mathrm{PQ}(t)}\vert
\end{displaymath}

とする (図 6)。
図: $\mbox{\boldmath $q$}(t)$
図 7: その展開図
\includegraphics[width=0.45\textwidth]{fig2-6.eps} \includegraphics[width=0.45\textwidth]{fig2-7.eps}

そして、側面を母線 $\mathrm{PQ}(t_0)$ で切り開いた展開図は、 頂点 $\mathrm {P}$ を原点に合わせ、 $\mathrm{PQ}(t_0)$$x$ 軸に合わせ、 曲線 $C$ に対応する展開図の曲線を $\hat{C}$ とし、 $C$ 上の点 $\mathrm{Q}(t)$ に対応する展開図上の点を $\hat{\mathrm{Q}}(t)$ とする (図 7)。 この $\hat{C}$ を極座標表示することを考える。

今、 $\hat{\mbox{\boldmath$q$}}(t)=\overrightarrow{\mathrm{O}\hat{\mathrm{Q}}(t)}$ とすると、まず

\begin{displaymath}
\vert\hat{\mbox{\boldmath$q$}}(t)\vert=\rho(t)=\vert\mbox{\boldmath$q$}(t)\vert\end{displaymath} (7)

であり、そして $\hat{\mathrm{Q}}(t)$ を決めるもう一つの条件は、 $C$ 上の弧 $\mathrm{Q}(t_0)\mathrm{Q}(t)$ の長さが、 $\hat{C}$ 上の弧 $\hat{\mathrm{Q}}(t_0)\hat{\mathrm{Q}}(t)$ の 長さに等しいことであり、それは、
\begin{displaymath}
\int_{t_0}^t\vert\hat{\mbox{\boldmath$q$}}'(s)\vert ds=\int_{t_0}^t\vert\mbox{\boldmath$q$}'(s)\vert ds
\end{displaymath}

と書けるので、この両辺を $t$ で微分すれば、
\begin{displaymath}
\vert\hat{\mbox{\boldmath$q$}}'(t)\vert=\vert\mbox{\boldmath$q$}'(t)\vert\end{displaymath} (8)

となる。この (7), (8) と、 初期条件
\begin{displaymath}
\hat{\mbox{\boldmath$q$}}(t_0)=(0,\rho(t_0))\end{displaymath} (9)

によって $\hat{\mbox{\boldmath$q$}}(t)$、すなわち $\hat{\mathrm{Q}}(t)$ が決まることになる。

$\hat{\mathrm{Q}}(t)$ を極座標 $r$, $\theta$ で表すことを考え、

\begin{displaymath}
\hat{\mbox{\boldmath$q$}}(t)=r(\cos\theta,\sin\theta)\end{displaymath} (10)

とすると、$r$$\theta$$t$ で表すことができる。 その $t$ を消去すれば、展開図 $\hat{C}$$r=r(\theta)$ の形の 極座標で表すことができることになる。

まず、(7) より

\begin{displaymath}
r=\vert\hat{\mbox{\boldmath$q$}}(t)\vert=\rho(t)\end{displaymath} (11)

であり、 $\theta=\theta(t)$ とすると、(10) より、
\begin{displaymath}
\hat{\mbox{\boldmath$q$}}'(t)
=\{\rho(t)(\cos\theta(t),\sin\...
...ho'(\cos\theta,\sin\theta)+\rho(-\sin\theta,\cos\theta)\theta'
\end{displaymath}

となるので、
\begin{displaymath}
\vert\hat{\mbox{\boldmath$q$}}'(t)\vert^2
=
(\rho')^2\vert(\...
...ert(-\sin\theta,\cos\theta)\vert^2
=
(\rho')^2+(\rho\theta')^2
\end{displaymath}

より、(8) から
\begin{displaymath}
(\rho')^2+(\rho\theta')^2 = \vert\mbox{\boldmath$q$}'\vert^2\end{displaymath} (12)

となる。 ここで、(7) より、
\begin{displaymath}
\rho(t)^2=\vert\mbox{\boldmath$q$}(t)\vert^2 = \mbox{\boldmath$q$}(t)\cdot\mbox{\boldmath$q$}(t)
\end{displaymath}

であるから、これを微分すれば
\begin{displaymath}
2\rho\rho'= 2\mbox{\boldmath$q$}\cdot\mbox{\boldmath$q$}'
\end{displaymath}

となるので、
\begin{displaymath}
\rho'= \frac{\mbox{\boldmath$q$}\cdot\mbox{\boldmath$q$}'}{\...
...h$q$}\cdot\mbox{\boldmath$q$}'}{\vert\mbox{\boldmath$q$}\vert}
\end{displaymath}

と書ける。よって (12) より
\begin{eqnarray*}(\rho\theta')^2
&=&
\vert\mbox{\boldmath$q$}'\vert^2-(\rho')^...
... は $\mbox{\boldmath$q$}$ と $\mbox{\boldmath$q$}'$ のなす角})\end{eqnarray*}


となるから、題意より $\theta'>0$ なので、
\begin{displaymath}
\theta'
= \frac{\vert\mbox{\boldmath$q$}\times\mbox{\boldma...
...mes\mbox{\boldmath$q$}'\vert}{\vert\mbox{\boldmath$q$}\vert^2}
\end{displaymath}

となり、$\theta(t_0)=0$ より結局 $\theta(t)$
\begin{displaymath}
\theta(t) =\int_{t_0}^t \frac{\vert\mbox{\boldmath$q$}\times\mbox{\boldmath$q$}'\vert}{\vert\mbox{\boldmath$q$}\vert^2} dt\end{displaymath} (13)

と表されることになる。

この (11), (13) から $t$ を消去する、 あるいは $r$, $\theta$ のパラメータ $t$ による表現により $\hat{C}$ が得られるわけであるが、 この積分 (13) の計算は必ずしも易しくはないことに注意する。

今、3 節の例にこれを適用してみよう。 この場合は、(6) の右辺が $\mbox{\boldmath$q$}(t)$ なので、 簡単のため、

\begin{displaymath}
\beta(t)=\frac{h\tan\alpha}{h\tan\alpha-a\cos t}
\end{displaymath}

とすると $\mbox{\boldmath$q$}(t)=\beta(t)(a\cos t,a\sin t,-h)$ であるから、
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$q$}'(t)=\beta'(a\cos t,a\sin t,-h)+\beta(-a\sin t,a\cos t,0)
\end{displaymath}

であるから、
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$q$}\times\mbox{\boldmath$q$}'
=\beta^2(a\co...
...,-h)\times(-a\sin t,a\cos t,0)
=\beta^2(ah\cos t,ah\sin t,a^2)
\end{displaymath}

となる。よって、$\beta>0$ より
\begin{displaymath}
\frac{\vert\mbox{\boldmath$q$}\times\mbox{\boldmath$q$}'\ver...
...\sqrt{a^2h^2+a^4}}{\beta^2(a^2+h^2)}
=\frac{a}{\sqrt{a^2+h^2}}
\end{displaymath}

となるので、(13) より
\begin{displaymath}
\theta=\int_0^t \frac{a}{\sqrt{a^2+h^2}}  dt = \frac{at}{\sqrt{a^2+h^2}}
\end{displaymath}

となり、 確かに 3 節の (3) が得られることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2009年9月18日