通常は、大きさと方向を持つものとして定義される幾何ベクトル、 あるいはその成分表示である数ベクトルを 「ベクトル」と呼び、その集合を「ベクトル空間」と呼ぶのであるが、 ベクトル同様の計算、すなわち和やスカラー倍、内積などの計算が可能な 別の対象物にもベクトルの概念を広げたものが「一般のベクトル空間」である。
集合 の任意の元
と任意の実数
に対して、
和
とスカラー倍
が定義でき (当然和もスカラー倍も
の元であることが必要)、次の公理を
満たすとき、
(と和、とスカラー倍の構造を含めたもの) を
(一般の) ベクトル空間と呼ぶ。
いずれも通常のベクトルでは当然成立する性質であるが、 逆に上の公理が満たされれば、基本的なベクトルの計算や展開などは 通常のベクトルと同じように計算できることになる。
なお、上の公理だけから、例えば公理 3 を満たす
は一つしか
ないことや、
となること、
公理 4 の
が
であることなども証明できる。
そしてこの公理は、普通の幾何ベクトルや数ベクトルだけが満たすわけではなく、 例えば、
だから「ベクトル」という言葉を使うと誤解を招きやすいので、 関数が元のベクトル空間のことを「関数空間」と呼ぶこともある。
例えば、 の場合、
は
と
いう写像が関数本体であり、対応すべてを見ていることになる。
グラフ全体を見ている、と考えてもよい。
の和
は、
に対して
を
対応させる写像
を 和として見ていて、
これも当然
上の連続関数となるから和が定義できるわけである。
と
の和を
という関数とする、
といったことである。
スカラー倍も に
を対応させる写像を
と考える、
ということである。
だから、例えば がベクトルとして
というのは、
「ある
に対して
になる」ということではなく、
「すべての
に対して
になる」ということを意味する。
数学ではこれを「恒等的に
」のように表現することが多い。
例えば という連続関数は、
では 0 となるが、
ベクトル空間の元としては
と 0 は等しくはなく全然別物、
と見るわけである。
なお、0 という定数関数が、当然
の零ベクトルである。
多項式の集合
も同様で、和もまた多項式、実数倍もまた多項式なので、
ベクトル空間となる。
なお、多項式の場合は、ベクトル空間の元としての等号「
」は、
本来は、「
と
の最高次数が同じで、各次数の
と
の係数が
すべて等しい」ことを意味するが、
多項式を
上の関数と見たときに「すべての実数
に対して
が成り立つ」とも言うこともできる。
実際、
次の多項式同士は、異なる
個での値が等しければ、
多項式として等しくなることが言えるので、
係数が等しいということとすべての
で等しいということは同値になる。
そして
でも、0 という多項式1 (すべての係数が 0 の多項式) が
の零ベクトルであり、
が
の 1 点で 0 になることと、
多項式として 0 になることは全く別である。
竹野茂治@新潟工科大学