4 参加料の期待値

まず、参加料の期待値である $A^-_N$ を求める。

$B^-_N$ は、$A^-_N$ のうち $N$ 回目が表で終わっているものに対する和で、 それをさらに以下のように分割する。

例えば表 1$N=3$ の例で言えば、 $B^-_3$ は回数 3 の 4 通りのものに対応し、 それは上から順に $C_0$, $C_1$, $C_2$, $C_2$ と分類されることになる。 なおこれは、最後の表を裏と見れば、 回数が 2 以下の分類に等しいことがわかるだろう。

$C_k$ の最初の $k$ 回は、表で終わる $k$ 回の任意の並びだから 丁度 $B^-_k$ と同じ状況で、 その後賭け 1 回分 (確率は $(1-p)^{N-1-k}p$) だけを その中のすべての事象に追加することになる。 $B^-_k$ に含まれる事象の確率の総和は $p$ ($k$ 回目が表で $(k-1)$ 回目までは任意) なので、 結局 $C_k$ に対応する $B^-_N$ の部分の和は

\begin{displaymath}
(B^-_k+cp)(1-p)^{N-1-k}p
\end{displaymath}

に等しいことがわかる。$C_0$ は賭け 1 回分だけで 確率は $(1-p)^{N-1}p$ だから、
\begin{displaymath}
c(1-p)^{N-1}p
\end{displaymath}

となる。よって、$B^-_N$ は、漸化式
\begin{displaymath}
B^-_N = c(1-p)^{N-1}p + \sum_{k=1}^{N-1}(B^-_k+cp)(1-p)^{N-1-k}p
\hspace{1zw}(N\geq 2)\end{displaymath} (2)

を満たすことになる。ここから $B^-_N$ を求めてみよう。

$N\geq 3$ に対し、 $B^-_N-(1-p)B^-_{N-1}$ を考えると、 (2) より

\begin{displaymath}
(1-p)B^-_{N-1} = c(1-p)^{N-1}p + \sum_{k=1}^{N-2}(B^-_k+cp)(1-p)^{N-1-k}p
\end{displaymath}

なので、
\begin{displaymath}
B^-_N - (1-p)B^-_{N-1} = (B^-_{N-1}+cp)p
\end{displaymath}

となることがわかり、よって、
\begin{displaymath}
B^-_N = (1-p)B^-_{N-1} + (B^-_{N-1} + cp)p = B^-_{N-1} + cp^2
\end{displaymath}

となるので、$B^-_N$$N\geq 2$ では公差 $cp^2$ の等差数列となる。 $B^-_2$ は、(1), (2) より、
\begin{displaymath}
B^-_2 = cp(1-p) + (B^-_1+cp)p = B^-_1p + cp = cp + cp^2
= B^-_1 + cp^2
\end{displaymath}

なので、ここも同じ公差であり、結局
\begin{displaymath}
B^-_N = cp + (N-1)cp^2\hspace{1zw}(N\geq 1)\end{displaymath} (3)

となることがわかる。

$A^-_N$ は、$B^-_N$$N$ 回目が裏のものを追加すればよいが、 その追加分は $C_0$, $C_k$$N$ 回目を裏にしたものだから、 賭けの回数は同じで確率だけが最後の 1 回分変わる。よって、

\begin{displaymath}
A^-_N = B^-_N + c(1-p)^N + \sum_{k=1}^{N-1}(B^-_k+cp)(1-p)^{N-k}
\end{displaymath}

となることがわかる。 (2) より、和の部分を $B^-_N$ で表せば、
\begin{displaymath}
A^-_N
= B^-_N + c(1-p)^N + \frac{1-p}{p}(B^-_N-c(1-p)^{N-1}p)
= B^-_N + \frac{1-p}{p}B^-_N
= \frac{1}{p}B^-_N
\end{displaymath}

となるので、結局 (3) より
\begin{displaymath}
A^-_N = c + (N-1)cp\hspace{1zw}(N\geq 1)\end{displaymath} (4)

と表されることになる。

なお、上では「最後に」1 回追加する形で漸化式を考えたのでだいぶ複雑になったが、 「先頭に」1 回追加すると考えればむしろやさしくなる。 1 回目に裏が出れば、参加回数はその後の $(N-1)$ 回の参加回数と同じで、 1 回目に表が出れば、参加回数は 1 回増えることになるので、 $A^-_N$$A^-_{N-1}$ の差は $cp$ となり、 よって (1) より (4) が得られることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2013年6月19日