2 もうかる人の割合

この問題は、幾何分布 と呼ばれる確率分布の問題で、 パラメータを少し一般化して考えてみる。 今、幾何分布 $G(p)$ ($p>0$) に従う確率変数を $X$ とする。 すなわち、$X$ は 0 以上の整数値を取り、
\begin{displaymath}
P(X=n) = (\mbox{$X$\ が $n$\ に等しい確率}) = p(1-p)^{n-1}
\end{displaymath}

であるとする。今回の問題では、$p$ = 表が出る確率 = 1/2 で、 $X$ は「表が出るまで投げた回数 $-$ 1」に対応し、 賞金は $Y=A\cdot B^X$ 円 ($A=10$, $b=2$) となっている。 また、1 回の賭けにかかる参加料を $c =$ 1 万円とする。

まず賞金が $d$ 円以上となる割合であるが、これは、

\begin{displaymath}
Y = A\cdot b^X \geq d, \hspace{1zw}X\geq \log_b\frac{d}{A}
\end{displaymath}

より、 $N=\lceil\log_b(d/A)\rceil$ ( $\lceil x\rceil$ は、 $x$ 以上の最小の整数) に対して $P(X\geq N)$ を求めればよい。
\begin{displaymath}
P(X\geq N)
=
\sum_{j=N}^\infty P(X=j)
=
\sum_{j=N}^\infty p(1-p)^{j-1}
\end{displaymath}

は、初項 $p(1-p)^{N-1}$、公比 $(1-p)$ の無限等比級数であるから、
\begin{displaymath}
P(X\geq N)
= \frac{p(1-p)^{N-1}}{1-(1-p)}
= \frac{p(1-p)^{N-1}}{p}
= (1-p)^{N-1}
\end{displaymath}

となる。

およそで考えれば、 $N\approx\log_b(d/A)$ であり、 今の場合は $1-p = 1/2 = 1/b$ に等しいので、

\begin{displaymath}
P(X\geq N)
\approx (1-p)^{\log_b(d/A)-1}
= b^{-\log_b(d/A)+1}
= \frac{Ab}{d}
\end{displaymath}

となり、よって $d$ 円以上当たる人の割合は、 $d$ に反比例することがわかる。

$A=10$, $b=2$$d=$ 1 万円の場合は $P(X\geq N) \approx 20/10000$ だからほぼ 500 人に 1 人、 $d=$ 1 千万円の場合は $P(X\geq N) \approx 20/10^7$ だから ほぼ 50 万人に 1 人、となる。

ちなみに、ジャンボ宝くじだと、元が取れる確率は 1/10 だから、 こちらの 1/500 はそれと比べてかなり低いが、 ジャンボ宝くじが 3000 万円以上当たる確率は 300 万人に 1 人だそうで、 こちらは 3000 万円以上だと 150 万人に 1 人なので、 桁が違うというほど離れてはいない。

だから、参加料が宝くじと同様、例えば 1 回 200 円程度ならば やるという人は増えるかもしれないが、 1 回 1 万円だと高く感じるのは無理はなさそうである。

竹野茂治@新潟工科大学
2013年6月19日