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2.1 収束の定義と基本性質

無限級数 (1) が 収束する とは、 $n$ 項までの和
\begin{displaymath}
S_n=\sum_{k=1}^n \alpha_k = \alpha_1 + \alpha_2 + \cdots + \alpha_n\end{displaymath} (2)

$n\rightarrow\infty$ のときに収束すること、と定義される。

\begin{displaymath}
\sum_{n=1}^\infty\alpha_n = \lim_{n\rightarrow\infty}S_n
= \lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^n\alpha_k
\end{displaymath}

収束しない場合、発散する という。例えば、

\begin{displaymath}
\sum_{n=1}^\infty (-1)^{n-1} = 1+(-1)+1+(-1)+\cdots
\end{displaymath}

は、

\begin{displaymath}
S_n=\left\{\begin{array}{ll}
0 & (n \mbox{ が偶数のとき})\\
1 & (n \mbox{ が奇数のとき})\end{array}\right.\end{displaymath}

なので収束しない。


命題 1

$\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$ が収束するならば $\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty}\alpha_n=0$


証明

$S_n-S_{n-1}=\alpha_n$ ($n\geq 2$) なので、 仮定より $n\rightarrow\infty$ のとき

\begin{displaymath}
S_n\rightarrow S =\sum_{n=1}^\infty \alpha_n,
\hspace{1zw}S_{n-1}\rightarrow S
\end{displaymath}

となるので、 $\alpha_n\rightarrow S-S=0$


この命題 1 の逆、すなわち $\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty}\alpha_n=0$ であったとしても $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$ が収束するとは限らない。 例えば、

\begin{displaymath}
\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\cdots\end{displaymath} (3)

は、 $\alpha_n=1/n\rightarrow 0$ だが、 この級数 (3) は $\infty$ に発散する。それは、

\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n}
&=&
1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\f...
...\\ &=&
1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\cdots
=
\infty\end{eqnarray*}

となるからである。しかし、少なくとも $\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty}\alpha_n\neq 0$ ならば $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$ が発散することは言える。

収束級数に対しては、容易に次も言える (証明は省略)。


命題 2

$\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$, $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \beta_n$ が収束する級数であるとき、

  1. $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty (\alpha_n\pm\beta_n)$ も収束し、 $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty (\alpha_n\pm\beta_n)
=\sum_{n=1}^\infty \alpha_n
\pm\sum_{n=1}^\infty \beta_n$
  2. 任意の定数 $c$ に対して $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty c\alpha_n$ も収束し、 $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty c\alpha_n=c\sum_{n=1}^\infty \alpha_n$
  3. すべての $n$ に対して $\alpha_n\leq\beta_n$ であれば $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty\alpha_n\leq \sum_{n=1}^\infty \beta_n$


また級数は、いくつかの項をまとめて考えても 収束、発散は変わらないことが言える。


命題 3

$\displaystyle S=\sum_{n=1}^\infty\alpha_n$ に対して、 $\{\alpha_n\}$$m$ 個ずつまとめた項からなる数列 $\{\beta_n\}$

\begin{eqnarray*}\beta_1 &=& a_1+a_2+\cdots+a_m\\
\beta_2 &=& a_{m+1}+a_{m+2}+...
...cdots+a_{3m}\\
\lefteqn{\makebox[0.3\linewidth][l]{\dotfill}}
\end{eqnarray*}

とし、その和を $\displaystyle \hat{S}=\sum_{n=1}^\infty\beta_n$ とすると、 $\displaystyle \lim_{n\rightarrow\infty}\alpha_n=0$ であれば、 $S$ の収束、発散と、$\hat{S}$ の収束、発散とは一致し、 $S=\hat{S}$ となる。


証明

簡単のため、$m=3$ として証明する。 $\{\alpha_n\}$, $\{\beta_n\}$ の部分和をそれぞれ $S_n$, $\hat{S}_n$ と 書くことにすると、

\begin{displaymath}
\hat{S}_n=S_{3n},
\hspace{1zw}S_{3n+1}=\hat{S}_n+\alpha_{3...
...,
\hspace{1zw}S_{3n+2}=\hat{S}_n+\alpha_{3n+1}+\alpha_{3n+2}
\end{displaymath}

であり、よって、 $S_n\rightarrow S$ ならば $\hat{S}_n=S_{3n}\rightarrow S$ となる。

逆に、 $\hat{S}_n\rightarrow\hat{S}$ のとき、

\begin{eqnarray*}S_{3n}
&=& \hat{S}_n\rightarrow\hat{S},\\
S_{3n+1}
&=& \hat...
...}_n+\alpha_{3n+1}+\alpha_{3n+2}
\rightarrow\hat{S}+0+0=\hat{S}
\end{eqnarray*}

となるので、 $S_n\rightarrow\hat{S}$ となる。



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竹野茂治@新潟工科大学
2006年9月26日