4 N≧3 の場合

$N\geq 3$ の場合の定理 1 の証明は、 3 節の $N=2$ の場合の不等式 (5) を繰り返し用いることで示される (厳密には帰納法)。

例えば $N=3$ の場合を考えてみる。今、

\begin{displaymath}
A=\sqrt{a_1^2+a_2^2},\hspace{1zw}B=\sqrt{b_1^2+b_2^2}
\end{displaymath}

として、(5) の両辺に $a_3b_3$ を加えると、
\begin{displaymath}
a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3
\leq\sqrt{a_1^2+a_2^2}\sqrt{b_1^2+b_2^2}+a_3b_3
=AB+a_3b_3\end{displaymath} (10)

となる。 この $AB+a_3b_3$ に、$N=2$ のシュワルツの不等式 (5) を適用すれば、
\begin{displaymath}
AB+a_3b_3\leq\sqrt{A^2+a_3^2}\sqrt{B^2+b_3^2}\end{displaymath} (11)

となることがわかる。ここで、
\begin{displaymath}
A^2+a_3^2=a_1^2+a_2^2+a_3^2,\hspace{1zw}
B^2+b_3^2=b_1^2+b_2^2+b_3^2
\end{displaymath}

であるから、結局 (10), (11) により $N=3$ のシュワルツの不等式 (2) が示されたことになる。

この等号成立条件は、(10), (11) の両方で等号が成立する場合であるから、

\begin{displaymath}
\frac{b_1}{a_1}=\frac{b_2}{a_2},\hspace{1zw}
\frac{B}{A}=\frac{b_3}{a_3}
\end{displaymath}

であることがわかる。 しかし、前者の等号成立の場合は (9) が成り立っていたので、結局
\begin{displaymath}
\frac{b_1}{a_1}=\frac{b_2}{a_2}=\frac{B}{A}=\frac{b_3}{a_3}
\end{displaymath}

であることがわかり、 よって $N=3$ の (3) が言えたことになる。 そしてこの比は (9) により
\begin{displaymath}
\frac{\sqrt{B^2+b_3^2}}{\sqrt{A^2+a_3^2}}
=\frac{\sqrt{b_1^2+b_2^2+b_3^2}}{\sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}}
\end{displaymath}

に等しいことも言える。

後はこれを繰り返していけば、 すべての自然数 $N$ に対して定理 1 が成り立つことがわかる。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年1月20日