2 設定

通常の振り子は、天井からぶらさがる軽い糸の先に重りをひとつつけるが、 「剛体振り子」は、その糸にあたる部分が剛体、すなわち金属や木など、 形が変形せずに質量があるものになっていて、 この場合は先端の重りは必要なく、 物理振り子と呼ばれることもあるようである。

剛体振り子の形状は、必ずしも棒状のものとは限らないが、 本稿ではまっすぐな棒状のもののみを考える (1)。

また、多重振り子とは、振り子の先にまた振り子がつく、 という構造になっているもので、 $n$ 重は $n$ 個の振り子が端同士でつないであるものを指す (細かくいえば、本稿では「直列」な $n$ 重振り子を考える)。

図 1: 多重振り子 (左は通常の振り子、右は剛体振り子)
\includegraphics[width=12cm]{pdl1-taju.eps}

なお、通常の振り子は、重りの先に次の振り子の糸を結べば済むが、 剛体振り子の場合は、 剛体同士が摩擦なく回転できるような (質量のない) ジョイントで つなぐ必要がある。 また、大きな回転角も想定する場合は、その回転によって剛体同士、 あるいは剛体が天井にぶつかることはない (すりぬけ条件) とか、 何回転でも回転可能であるといった設定でシミュレーションを していることも多い。 本稿でも、特に回転角の制限やぶつかるような設定はせずに考察する。 各剛体同士は、そのジョイントを通して互いに力を与えるが、 それは作用反作用の関係になる。

また本稿では、剛体の運動は 1 平面内で起きるとし、 よって回転もその平面内での回転とする。 $n$ 個の剛体は、同じ材質、同じ太さのまっすぐな棒状のものとするが、 長さは揃っている必要はないとする。

このような方程式の導出には、ラグランジュの運動方程式が 良く用いられるようであるが、本稿では、より煩雑ではあるが古典的な方法、 すなわちニュートンの運動方程式を用いることにする。

竹野茂治@新潟工科大学
2018-11-12