1 はじめに

通常、微積分の教科書では、微分の公式は極限による微分の定義
\begin{displaymath}
f'(x) = \lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\end{displaymath} (1)

によって証明しているが、 一般的に学生の極限の理解は良いとは言えず、 それを用いる公式の証明の紹介は、 全く意味がないと思わないが、やや意味が薄いように感じる。

そのため以前から、極限を極力用いない形での微分の公式の証明を考えていたが、 本稿では、初等関数である巾乗関数 ($x^\alpha$)、 三角関数 ($\sin x$, $\cos x$)、指数関数 ($a^x$)、 対数関数 ($\log_a x$) の導関数の公式に対するその試みを紹介する。 極限を用いない形ということは、 極限による定義 (1) の代わりに、 「導関数の値 $=$ グラフの傾き」として説明を考えていく。

なお、詳しくは調べていないが、 以下の説明はいずれも難しくはないもので、 多分既に考えられているものであろうから、 本稿が初出だとは思わないでいただきたい。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年4月11日