2 指数関数

まずは、指数関数の導関数の公式
$\displaystyle (e^x)'$ $\textstyle =$ $\displaystyle e^x$ (2)
$\displaystyle (a^x)'$ $\textstyle =$ $\displaystyle a^x\log_e a\hspace{0.5zw}(a>0, a\neq 1)$ (3)

から考える。

$f(x)=a^x$ ($a>0$, $a\neq 1$) とすると、 $y=f(x)$ のグラフの $x=p$ での傾きは $f'(p)$ である。

$g(x) = f(x)/a^p$ とすると、 $y=g(x)=f(x)/a^p$ のグラフは $y=f(x)$ のグラフを $y$ 方向に $1/a^p$ 倍したものだから $y=g(x)$$x=p$ での傾き $g'(p)$

\begin{displaymath}
g'(p)=\frac{f'(p)}{a^p}\end{displaymath} (4)

となる。一方、指数関数の性質により、
\begin{displaymath}
g(x) = \frac{f(x)}{a^p} = \frac{a^x}{a^p} = a^{x-p} = f(x-p)\end{displaymath} (5)

であるから、 $y=g(x)$$y=f(x)$$x$ 方向に $p$ だけ平行移動したものとなり、 $y=g(x)$$x=p$ でのグラフの傾き $g'(p)$ は、 $y=f(x)$$x=0$ でのグラフの傾き $f'(0)$ に等しいことになる (図 1)。
図 1: $y=g(x)=f(x)/a^p=f(x-p)$ のグラフと傾き
\includegraphics[height=0.3\textheight]{nlm-exp1.eps}

よって、(4) と $g'(p)=f'(0)$ により $f'(p)=f'(0)a^p$ がわかり、$p$ は任意なので、

\begin{displaymath}
f'(x)=f'(0)a^x\end{displaymath} (6)

が得られる。あとは $f'(0)$ の値を決定すればよい。

この $f'(0)$ の値は $a$ によって変わるが、

\begin{displaymath}
\mbox{「この値が 1 となるような $a$ を $e$ と
定めると$e=2.71828\ldots$ となる」}\end{displaymath} (7)

という形で $e$ を定義すれば、 (6) から (2) が得られることになる。

この (7) は、高校の教科書での通常の $e$ の定義

\begin{displaymath}
e = \lim_{n\rightarrow \infty}{\left(1+\frac{1}{n}\right)^n}\end{displaymath} (8)

とは異なるが、(7) は極限で書けば
\begin{displaymath}
\lim_{h\rightarrow 0}\frac{e^h-1}{h}=1\end{displaymath} (9)

となり、これは $e$ のみが持つ性質であるから、 (7) による定義でも (8) と 同じものが得られることが保証される。 ちなみに、(7) のような $e$ の定義の仕方は、 現在私が使用している教科書 [1] でも採用している方法である。

一般の $f(x)=a^x$ の場合は、$f'(0)=A$ とすると、

\begin{displaymath}
f\left(\frac{x}{A}\right)
= a^{x/A}
= \left(a^{1/A}\right)^x
\end{displaymath}

より $y=f(x/A)$ も指数関数であり、そのグラフは $y=f(x)$ のグラフを $x$ 方向に $A$ 倍したものなので、 $x=0$ での傾きは $A/A=1$ になり、 よって (7) により $a^{1/A}=e$ であることがわかる。 よって、$e^A = a$ より $A = \log_e a = f'(0)$ となるので、 これを (6) に代入すれば (3) が 得られる。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年4月11日