6 具体例

本節では具体例として、軸対称物体である、球面の一部、 および球の一部の 2 つのパターンの 3 種類の図形について 計算を行う (図 1 は中心に近い方から表面を見上げた図)。
図 1: 考察する図形 (a),(b),(c)
\includegraphics[height=6cm]{grv3-arcs1.eps}
地球で言えば、(a) は $\pi/2-\alpha$ よりも高緯度の地域の地球表面部分、 (b) は地球内部も入れた $\pi/2-\alpha$ より高緯度の部分、 (c) は、(b) と地球中心を結ぶ領域の円錐も追加した部分、ということになる。 なお、簡単のため密度はいずれも一定であるとし、球の半径は $R$ とする。

まず、(a) は、対称軸を $x$ 軸と見れば、円弧の一部である $h=h_a(x)=\sqrt{R^2-x^2}$ ( $R\cos\alpha\leq x\leq R$) の $x$ 軸回りの 回転面なので、重心の $x$ 座標 $g_a$ は (11) より

\begin{displaymath}
g_a
= \frac{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R xh_a\sqrt{...
...%
{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R h_a\sqrt{1+(h_a')^2} dx}\end{displaymath} (18)

となるが、 $h_a'=-x/\sqrt{R^2-x^2}$ なので、
\begin{displaymath}
h_a\sqrt{1+(h_a')^2}
= \sqrt{R^2-x^2}\sqrt{1+\frac{x^2}{R^2-x^2}}
= \sqrt{R^2-x^2+x^2}
= R\end{displaymath} (19)

となるので、

\begin{eqnarray*}\int_{R\cos\alpha}^R h_a\sqrt{1+(h_a')^2} dx
&=&
\int_{R\cos...
...
\int_{R\cos\alpha}^R xRdx
 =\
\frac{R^3}{2}(1-\cos^2\alpha)\end{eqnarray*}

より、
\begin{displaymath}
g_a
= \frac{R^3(1-\cos^2\alpha)/2}{R^2(1-\cos\alpha)}
= \frac{R}{2}(1+\cos\alpha)\end{displaymath} (20)

となる。

次は (b) であるが、これも同じ $h=h_a(x)$ の下の図形の回転体なので、 (14) よりその重心の $x$ 座標 $g_b$ は、

\begin{displaymath}
g_b
= \frac{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R xh_a^2 dx}%
{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R h_a^2 dx}\end{displaymath} (21)

となるが、

\begin{eqnarray*}\int_{R\cos\alpha}^R h_a^2 dx
&=&
\int_{R\cos\alpha}^R (R^2-...
...2\alpha + \cos^4\alpha)
 =\
\frac{R^4}{4}(1 - \cos^2\alpha)^2\end{eqnarray*}

より、$g_b$ は、
\begin{displaymath}
g_b
=
\frac{R^4(1 - \cos^2\alpha)^2/4}{R^3(1 - \cos\alp...
...pha)/3}
=
\frac{3R}{4} \frac{(1+\cos\alpha)^2}{2+\cos\alpha}\end{displaymath} (22)

となる。

最後に (c) であるが、この計算は 2 通り考えられ、 一つは、一般的な公式 (9) に戻って、 その 3 重積分を 3 次元極座標変換して計算する方法である。 対称軸を $z$ 軸と見れば、(c) の積分領域は、

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
(x,y,z) = (r\cos\phi\cos\theta, r\sin\ph...
...c{\pi}{2}-\alpha\leq\theta\leq\frac{\pi}{2}\right)
\end{array}\end{displaymath} (23)

となるからその積分は難しくない。

もう一つは、(c) を (b) と円錐に分離して考える方法であり、 それぞれの重心を求めた上で、

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OG}} = \frac{M_1\overrightarrow{\mathrm{OG_1}}+M_2\overrightarrow{\mathrm{OG_2}}}{M_1+M_2}
\end{displaymath}

の公式を使えば計算できる。または、同じことであるが、(c) を

\begin{displaymath}
h=h_c(x)
=
\left\{\begin{array}{ll}
x\tan\alpha & (0\leq x...
...]
\sqrt{R^2-x^2} & (R\cos\alpha\leq x\leq R)\end{array}\right.\end{displaymath}

の回転体と見て計算することでも計算できる。 $h_c(x)$ $x\geq R\cos\alpha$ の部分は $h_a(x)$ であり、 その積分はすでに計算してあるので、あとは $x<R\cos\alpha$ の部分のみ計算すればよい。

\begin{eqnarray*}\int_0^{R\cos\alpha}h_c(x)^2 dx
&=&
\left[\frac{x^3}{3}\tan^2...
...ht]_0^{R\cos\alpha}
 =\
\frac{R^4}{4}\sin^2\alpha\cos^2\alpha\end{eqnarray*}

となるので、

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\int_0^Rh_c(x)^2 dx
=
\int_0^{R\cos\alpha}h_c(x)^2\...
...\frac{R^4}{4}\sin^2\alpha
 =\
\frac{R^4}{4}(1 - \cos^2\alpha)\end{eqnarray*}

となる。よって、(c) の重心の $x$ 座標 $g_c$ は、
\begin{displaymath}
g_c
=
\frac{R^4(1 - \cos^2\alpha)/4}{2R^3(1 - \cos\alph...
...}{8}(1+\cos\alpha)
\hspace{1zw}\left(= \frac{3}{4} g_a\right)\end{displaymath} (24)

となる。

例えば、半球 ($\alpha=\pi/2$) の場合は (20), (22), (24) より $g_a=R/2$, $g_b=g_c=3R/8$ となる。 球面よりも内部がつまっている球の方が赤道に近い部分が重い分、 重心が中心に近くなる。 また (20) より、$g_a$ は常に $x$ 座標の両端 $R$, $R\cos\alpha$ の真ん中になるが、 これは 7 節で述べる写像の正積性とも関係する。

(a),(b),(c) との比較の意味も込めて、 次はそれらの平面版である図形の重心を計算する。 すなわち、$g_d$$y=h_a(x)$ のグラフと $y=-h_a(x)$ のグラフをつなげた 図形の重心の $x$ 座標、 $g_e$$y=h_a(x)$ のグラフから $y=-h_a(x)$ 軸までの領域の重心の $x$ 座標、 $g_f$$y=h_c(x)$ のグラフから $y=-h_c(x)$ 軸までの領域の重心の $x$ 座標 とする。こちらも密度はすべて一定とする。このとき、 $g_d$ は、(15) より

\begin{displaymath}
g_d
= \frac{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R x\sqrt{1+(h...
...}%
{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R\sqrt{1+(h_a'(x))^2} dx}\end{displaymath} (25)

となるが、

\begin{displaymath}
\sqrt{1+(h_a'(x))^2} = \sqrt{1+\frac{x^2}{R^2-x^2}}
= \frac{R}{\sqrt{R^2-x^2}}
\end{displaymath}

なので、 $0\leq\alpha\leq\pi$ より、

\begin{eqnarray*}\int_{R\cos\alpha}^R\sqrt{1+(h_a'(x))^2} dx
&=&
\int_{R\cos\...
...rt{R^2-x^2}\right]_{R\cos\alpha}^R
 [.5zh]
&=&
R^2\sin\alpha\end{eqnarray*}

となり、よって、
\begin{displaymath}
g_d
= \frac{R^2\sin\alpha}{R\alpha} = R \frac{\sin\alpha}{\alpha}\end{displaymath} (26)

となる。

$g_e$ は、(17) より、

\begin{displaymath}
g_e =
\frac{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R xh_a(x)dx}{\displaystyle \int_{R\cos\alpha}^R h_a(x)dx}\end{displaymath} (27)

となるが、部分積分により、

\begin{eqnarray*}\int_{R\cos\alpha}^R h_a(x)dx
&=&
\int_{R\cos\alpha}^R\sqrt{R...
...^2(\alpha - \cos\alpha\sin\alpha) - \int_{R\cos\alpha}^R h_a(x)dx\end{eqnarray*}

となるので、

\begin{displaymath}
\int_{R\cos\alpha}^R h_a(x)dx
= \frac{R^2}{2}(\alpha - \cos\alpha\sin\alpha)
\end{displaymath}

となる。一方、

\begin{eqnarray*}\int_{R\cos\alpha}^R xh_a(x)dx
&=&
\int_{R\cos\alpha}^Rx\sqrt...
...)^{3/2}\right]_{R\cos\alpha}^R
 &=&
\frac{R^3}{3}\sin^3\alpha\end{eqnarray*}

となるので、
\begin{displaymath}
g_e
= \frac{R^3(\sin^3\alpha)/3}{R^2(\alpha - \cos\alpha\...
...frac{2R}{3} \frac{\sin^3\alpha}{\alpha - \cos\alpha\sin\alpha}\end{displaymath} (28)

となる。

最後に $g_f$ は、 (17) より、

\begin{displaymath}
g_f =
\frac{\displaystyle \int_0^R xh_c(x)dx}{\displaystyl...
...le \int_0^{R\cos\alpha} h_c(x)dx+\int_{R\cos\alpha}^R h_a(x)dx}\end{displaymath} (29)

であり、

\begin{eqnarray*}\int_0^{R\cos\alpha} h_c(x)dx
&=&
\int_0^{R\cos\alpha} x\tan\...
...a} x^2\tan\alpha  dx
 =\
\frac{R^3}{3}\sin\alpha\cos^2\alpha\end{eqnarray*}

となるので、

\begin{eqnarray*}\int_0^R h_c(x)dx
&=&
\frac{R^2}{2}\sin\alpha\cos\alpha
+ \...
...lpha
+ \frac{R^3}{3}\sin^3\alpha
 =\
\frac{R^3}{3}\sin\alpha\end{eqnarray*}

より、
\begin{displaymath}
g_f
= \frac{R^3(\sin\alpha)/3}{R^2\alpha/2}
= \frac{2R}{...
...\sin\alpha}{\alpha}
\hspace{1zw}\left(=\frac{2}{3} g_d\right)\end{displaymath} (30)

となる。 なお、$g_f$$g_c$ 同様、(8) に戻って 極座標で計算してもそれほど難しくはない。

例えば半円 ($\alpha=\pi/2$) の場合、 $g_d=2R/\pi (=0.64R)$, $g_e = g_f = 4R/(3\pi) (=0.42R)$ となる。 $g_d$, $g_e$, $g_f$ はいずれも分母に $\alpha$ 自身が 残るため $g_a$, $g_b$, $g_c$ とはやや異なる。 平面と立体でこのような違いが現れるのは少し興味深い。

竹野茂治@新潟工科大学
2019-03-05